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□Baby Talk
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そう。爽子とぶつかった相手は初めて風早宅にお邪魔したときに仲良くなった翔太の弟の透太だった。
優しくていつも手作りのお菓子をくれる爽子のことが透太はだいすきだった。
「怪我は…大丈夫そうだね。良かった。今日はマルちゃんのお散歩なのかな?」
爽子は立ち上がるとすぐに透太に怪我がないか調べる。
傷などがないことに安堵すると透太に手を差し伸べながら問った。
「うん!今日はしょーた龍んちにいってんだ!だからオレが散歩してんの!」
にこにことして誇らしげに話す透太が可愛いくて自然と頬がゆるむのを感じた。
「そうなんだ、えらいね。あれ?でもマルちゃんは…?」
先ほどから話題にあがっているマルの姿がどこにもない。
「あぁぁ!そうだマル!いきなり走っていっちゃって!」
見失ったー!と顔を青くして叫ぶ透太を宥めながら、どこかにいないかと辺りを見渡すと河原の先にある公園に白い影をみとめた。
「透太くん、もしかしてマルちゃん公園にいるのかも。行ってみよう?」
そして駆け足で公園に向かうと、やっとしっかりとその姿を認識することができてふたりは胸を撫で下ろした。
どうやらマルは散歩中らしい他の犬と戯れているようだった。
「こらマル!心配するだろ!」
透太にお叱りを受けたマルは一度申し訳なさそうに透太にすり寄ったあと再び先ほどの犬と戯れ始めた。
「あ、あのマルがすみません!」
透太が礼儀正しく飼い主に詫びると、気にしないで下さいと言われたのでしばらくそのまま二匹が戯れる様子を見守ることにした。
「あの、マルちゃんはオスですよね?」
ふと飼い主が思いついたように言う。
「ふたりともとても仲がいいし、ほっといたらもしかして子供が生まれるかもしれないですね」
あ、ウチの子メスなんですよと笑い混じりに言った言葉に爽子は目をキラキラさせてマルの子供について考え始めたのだった。
その後程なくして飼い主と別かれ、未だ興奮の止まぬマルを抱えた透太に別れを告げたあと爽子も帰路についたのだった。