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□Beautiful☆Girl〜拉致監禁編〜
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あやねと三浦による秘密会議から2日―…
遂にこの日がやってきた…
晴々とした秋空の下
腰まで伸びる黒髪を風に靡かせながら
運ぶ足は実に軽やか。
今日という日にクラスの一員として参加できる喜びを深く噛み締め一歩、また一歩と見慣れた道を行く。
(楽しみだなぁ……みんなが楽しいといいなぁ…)
―今日は待ちに待った
ハロウィンパーティーです
Beautiful☆Girl
「あ、黒沼!おはよ!」
秋の色が濃くなってきた風景の中にそこだけ切り抜いたかのように初夏の爽やかな空気を纏う少年が一人佇んでいた。
「お、おはよう!風早くん」
爽子の声が届くと
眩しいほどの笑顔を返すのは
爽子の彼氏である風早翔太だ。
「なんかワクワクしすぎて早く起きちゃった!教室まで一緒に行こ!」
そう言って風早は爽子に向かって己の手を差し出した。
爽子は顔を少し赤らめてその手をじっと見つめる。
「ん?」
優しい笑顔で笑いかけてくる恋人に、先程まで緩やかなリズムを刻んでいた爽子の心臓がずんどこと忙しない音を打った。
「あの…!」
「悪いわね風早。
今日はあたし達が先約なの」
「そうそう!勝手に連れてかれちゃ困るんだよね〜」
なにか言葉を発しようとした爽子の声を遮って聞こえてきたのは風早の天敵とも呼べる矢野あやねと三浦健人の声だった。
「んじゃ、そーゆーことだから貞子ちゃんは借りてくよー」
「あ えと、その…ま、また後でね風早くん!」
三浦とあやねに連れていかれる愛しの彼女を訳も分からず見つめる風早。
爽子の温もりが重なるはずだった手の中を虚しく秋風が通り抜けた。