□雨には二人で
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「あ、雨だ…」

「本当だね。僕傘持って来てないよ」



雨には二人で



そんな会話が聞こえたのは、ファミレスを出た時だった。


今日は青学の天才、不二と遊びに来ていた。



「天気予報見てなかったのかよ?」

「うん。すっかり忘れてた」


傘を忘れたという不二に溜め息をつきながら、岳人はかばんから折りたたみ傘を取り出した。


「折りたたみだから小せぇけど我慢しろよ」

「ありがとう向日」


整った顔立ちにサラサラの茶髪。
男の身でも見とれてしまう。

二人で折りたたみ傘に入る。
小さいのは当たり前で、無意識に二人の肩が触れ合った。


「…………」


緊張のために、岳人の口は重たい。
しとしとと降る雨をただただ見つめていた。

触れ合っている肩が熱い。


「向日は優しいね」

「っ…なんだよいきなり」


急に隣から声がかけられたものだから、つい変な態度をとってしまう。



「実は僕、ちゃんと傘持って来てるんだよ」


耳元に顔を近付けて囁かれた。
吐息が耳に掛かり、くすぐったい。


「ちょ…っ、はっ?お前持ってないって…」

「え?なんの話?」


しらばっくれる不二に岳人は小さく溜め息を吐いた。


「…ったく。しょうがねぇな」

「ふふ…君は本当に良い子だね」


なにやら不二が黒い笑みを浮かべているのは気のせいだろう。


「さて向日、次はどこに行く?」

「んー…あ、スケート行こうぜ!」

「良いね。賛成」



小さな傘の下、二人は目的地を目指して歩みを進める。



その足が向かう先は、2人が作り出す未知の世界。


その世界を歩みを重ねて作っていく。



これからもまた、雨には二人で傘をさそう。





fin
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