□おやすみの前に
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「ぐしっ」


屋上で眠っていた時。
自分のくしゃみで目を覚ましてしまった。


「ジロー、風邪でもひいたのか?」



寝ぼけ眼で鼻をすすっていると、横から俺を気遣ってくれる優しい声が聞こえた。


この声は…、


「がっくん?」


声の主はやっぱり岳人で、少し肌寒い秋の風に浸りながら、給水等の上に上ってきた。


「うーん…病気かな」

「は?大丈夫かよ?」


心配してくれるんだ。嬉C〜。
実はこれは恋の病…なんて言ったらがっくんはどんな顔を見せてくれるんだろう。

コロコロ変わるその表情が昔から大好きで。

俺はそんな岳人に意地悪するのが大好きだった。



「大丈夫じゃなさそうだから膝枕してよがっくん」

「はあ?膝枕?」


悩みに悩んだ後、結局がっくんが折れた。
ふふふ、幼馴染の特権だよね。


「少しだけな」

「はいはい〜」


なんだかんだ言って岳人は俺に甘い。
女の子みたいに柔らかい足に頭をおいたら、逆に眠れなくなった。


「がっくん、今何時間目?」

「もうすぐ5時間目」


サボっちゃ駄目だよと言えば、がっくんは人のこと言えねぇだろって。

ごろりと寝返りを打つと、

「寝るのか?」

と聞こえてきた。


「うん。ちょっとね」


久しぶりにいい気分だ。
おやすみの前にがっくんの顔が見られるなんてね。

きっと今寝たらいい夢が見られるんだろうな。

もう少しがっくんとしゃべっていたいけれど。


やっぱり襲ってくる眠気にはかなわない。






おやすみ。俺の大好きな岳人。

おやすみ。俺の初恋。



fin
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