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□magnet〜ver.日吉〜
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「お前がパートナーかよ…」
か細い火が心の端に灯る──。
「忍足さんと仲がいいんですね…」
いつの間にか燃え広がる熱情。
「……あんたが、好きです」
私の蝶不規則に飛び回り、あなたの手に鱗粉を付けた。
magnet〜ver.日吉〜
関東大会が終わり、全国大会に向けて練習を重ねている時期。
監督から呼び出された俺と、俺より小さい向日さん。
嫌な予感は的中するもので、監督の口から発せられたものは、当時の俺には一番聞きたくない言葉だった。
“向日と日吉は全国大会でダブルスを組むこと”
負けたのに俺を使ってくれるのはありがたい。
が、今までシングルス一本だった俺がダブルスだなんて。しかもよりによって向日さんと。
ショックだった。
認められていない気がして。
公式戦では負けてばかりの向日さんと組まされるなんて。
悔しい思いをどこにぶつけていいのか分からず、ついにはパートナーになったばかりの向日さんにあたってしまう。
そんな俺にも、向日さんは優しかった。
俺を責めなかった。
確かに喧嘩したことは何度もあるけれど、向日さんは、俺を責めたことは一度だってなかった。
給水等で今までとった態度について詫びた時、向日さんは笑って許してくれた。
その笑顔を見て、自分の気持ちを自覚したのを覚えている。
まっすぐな言葉で告白。
嬉しい返事が返ってきた。
色々な困難があったけれど、なんとか付き合い始めた今現在。
同性愛の重さがじわじわとのしかかってきた。
許されないことならば、なおさら燃え上がる。
同性愛は案の定偏見をもたれる。
非難され白い目で見られ。
俺たちはもうギリギリなのかもしれない。
ダメだとわかっていても、なおさら燃え上がるこの感情は、もうどうしようもないところまで来ていた。
どんなに非難されても、向日さんだけは守っていたかった。