H
□好きになったのは、俺。
1ページ/2ページ
「なあ跡部」
「あ?」
俺ら、なんでこんなにお互いに好きなんだろうな──。
好きになったのは、俺
そう言おうとして、慌てて飲み込んだ。
その理由は明確。
ついこの間も同じ質問をしたから。
前もそうやって聞いて、“好きに理由はない”なんて回答を貰った。
俺はもちろん、そんなんじゃ納得してないけど。
「やっぱなんでもない」
「へぇ…」
跡部は目線を手元の本に戻した。
なーんか今日…素っ気ないな。
「岳人?」
「なんでもねえって」
不思議な雰囲気。
息が詰まるような、独特なもの。
目線は常に手元を見つめていた。
「…………」
「……っ」
ふいに視線を向けられた。
じっと見つめてくる瞳。
「…なんだよ」
「お前、勘違いすんなよ」
「は?」
何が言いたいんだコイツ。
「好きになったのは、俺。
だからな。勘違いすんな」
「どういう意…、…っ」
そこまで言って、俺は口を止めた。
跡部の言ったことの意味が、ようやく理解できたからだ。
俺が跡部を好きなように、跡部も俺が好きだってこと。
そして俺が跡部を好きになる前から、跡部は俺を好きだってこと。
「くそくそっ!顔が熱い…っ」
顔が熱いのも、
俺がお前を好きになっちまったことも。
全部全部お前のせいだ。
そんなお前が好きで好きでたまらない。
きっとそんな俺も相当馬鹿なんだ。
fin.