□好きになったのは、俺。
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「なあ跡部」

「あ?」



俺ら、なんでこんなにお互いに好きなんだろうな──。



好きになったのは、俺



そう言おうとして、慌てて飲み込んだ。

その理由は明確。
ついこの間も同じ質問をしたから。

前もそうやって聞いて、“好きに理由はない”なんて回答を貰った。

俺はもちろん、そんなんじゃ納得してないけど。


「やっぱなんでもない」

「へぇ…」


跡部は目線を手元の本に戻した。
なーんか今日…素っ気ないな。


「岳人?」

「なんでもねえって」


不思議な雰囲気。
息が詰まるような、独特なもの。
目線は常に手元を見つめていた。




「…………」

「……っ」



ふいに視線を向けられた。
じっと見つめてくる瞳。



「…なんだよ」



「お前、勘違いすんなよ」


「は?」


何が言いたいんだコイツ。



「好きになったのは、俺。

だからな。勘違いすんな」


「どういう意…、…っ」


そこまで言って、俺は口を止めた。
跡部の言ったことの意味が、ようやく理解できたからだ。


俺が跡部を好きなように、跡部も俺が好きだってこと。

そして俺が跡部を好きになる前から、跡部は俺を好きだってこと。



「くそくそっ!顔が熱い…っ」



顔が熱いのも、
俺がお前を好きになっちまったことも。


全部全部お前のせいだ。


そんなお前が好きで好きでたまらない。

きっとそんな俺も相当馬鹿なんだ。




fin.
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