□歩いた軌跡
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「おーいジロー!起きろー、部活遅れるぞー?」

「今行くー!」


朝、清々しい空気に響くのは岳人とジローの声。

隣り合わせの家を出ると、商店街に出る。、

この商店街では、この2人の声は昔からの馴染みであった。

ジローがぱっちり起きているのは、今日が大切な日だから。

こういう日のジローはなぜか目覚めがいい。



「岳ちゃん、ジローちゃん。おはよう」

「「おばちゃんおはよう!」」


「あらジローちゃんとがっくん。部活?大変ねー」

「「うん!おはよう!」」


商店街の人たちにとってこの2人は、可愛い息子のような存在。

声を掛けられては、明るく挨拶する二人に、精が出る。


商店街を走り抜けると、昔と変わらず宍戸が待っていてくれている。



「おっせーよ」

「ジローが寝坊したんだよ!」

「がっくんも納豆食べるの遅かったC〜!」


昔からどんなに遅刻しても、待っていてくれる。
上級生に泣かされた時、1人で上級生に立ち向かってくれた大きな背中

そんな宍戸が小さい頃から大好きな2人。
成長した今じゃ、照れくさくて言葉にできないけれど。


 
言い合いをしながら、学校への道につく。

昔から、三人で歩くこの道が大好きで。


学校に行くまでのこの道のりは、三人だけの道だった。



中学に上がって、部活をして、


「おはようさん」

「今日はジローもいるんだね」


「侑士、滝、おはよー」


いつのまにか、


「皆さん、おはようございます」

「相変わらず朝から騒々しいですね」

「長太郎、若」


こんなにも、


「てめーら遅えよ、朝練何時からだと思ってやがんだ?」

「…ウス」

「送り迎えしてもらってる奴が何言ってんだよ…」



一緒に歩く仲間ができていた。




賑やかな朝の空気に、3人は微笑んだ。




「なあなあ、今日の帰り皆でどっか遊びに行かん?」

「あー、わりぃ侑士。俺ら3人用事あんの」


忍足の誘いをキッパリと断る岳人。


「なんや、がっくんが遊び断るやなんて珍しいやん。しゃーない。滝、日吉、鳳、カラオケ行こか」



「え、」

「嫌ですよ、1人で行って下さい」

「自分ら反応酷いな…」

「たまにはこういうメンバーで行くのも良いよねー」


滝は忍足に笑いかけた。
鳳は跡部の携帯へ連絡を入れる。







今日は3人にとって大切な日。

3人が"友達"になった日。

毎年、この日を大切にしてきた。


今までたくさん道が逸れたりした。
そのたびに仲間が支えてくれて正しい方へと方向転換できた。


道を歩いてできた仲間は大きな存在。

でもこの日を共有できるのはこの3人だけで。


この日は毎年、3人が出会った場所で過ごすことにしている。



喧嘩は数え切れない程した。
でもここまで来れた。

それはお互いに認め合っていたから。


だからこそ今がある。




今まで一歩一歩、ゆっくり歩いて作り出した軌跡。


その歩いた軌跡は、これからも逸れながら伸びていく。



 
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