□寒空を眺めて
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「お、流れ星」

「金金金」

「岳人、もっと可愛げのあること願えよ」
「うっせー、今マジで金欠なんだって」


ひたすらに繰り返される幼なじみの会話。部活が終わった部室での出来事である。

宍戸は岳人と会話しながらラケットの入ったバッグを肩に背負った。


「……宍戸、もう帰んのかよ?」

「ああ。今日長太郎ん家に用があってよ」

窓の外を眺めていた岳人の瞳は平行に移動し、宍戸を見据える。


「お前らほんっとに仲良いなー」

「お前と跡部が喧嘩しすぎなんだよ…」


窓の縁からもたれかかっていた腰を上げ、岳人は宍戸が部室から出て行くのを見送った。

日ごろ喧嘩が絶えない岳人と跡部、それと違って、毎日ベッタリ仲のいい鳳と宍戸。

そんな2人が少し羨ましかったりする岳人だが、跡部を前にすると強がってしまって素直になれない。


「おい岳人、帰るぞ」

「あ、おっせーぞ跡部」

何の前触れもなく、跡部が部室に入ってきた。

星を見上げていた岳人を跡部は不思議に思うが、表情を変えずに質問を投げかけた。


「さっき…宍戸と何話してた?」

「宍戸に嫉妬かよ?」

「部長として気になっただけだ」


自分が不利になるといつも出てくる「部長として」という言葉。

お決まりの言葉に、岳人は口元に笑みを宿した。


「流れ星に何を願うかって話」

「何願ったんだ?」

「金」


淡々と続けられる会話。
岳人は跡部が嫉妬するのを楽しんでいる様子。


「金ならいくらでも」

「ばっか。お前ん家には頼りたくねーの」


跡部も、岳人のこういうところが好きだったりする。


「もういい。帰るぞ」

「お?」


無理やり手をつながれ、岳人は素っ頓狂な声をあげた。




流星が飛び交う、満天の下で。

手をつなぎあった恋人達が願うのは、ただひとつ。


それは金でも地位でも土地でもなく、

大好きな人のぬくもりをずっと感じていたいという小さくて大きな願い。



岳人は跡部の腕に勢いよく抱きついた。



このぬくもりを、いつまでも。


fin.
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