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□先輩の背には羽が生えて
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「長太郎。ちょっとこれ持ってて」
「はい。向日さん」
また、いつもの会話が聞こえた。
先輩の背には羽が生えて
「またやってんぜ。岳人のやつ」
「鳳もよう岳人の我が儘についてけるなー。関心やわ。まあ俺も岳人の我が儘くらい聞けるけど」
この悪口に似た会話をするのは宍戸と忍足。
悪口といっても、ただの呆れ。
なんでも最近、岳人と鳳が異様にくっついているのだ。
傍から見れば、まるで犬と飼い主。
小さな小さな飼い主と、大きな大きな忠犬。
この状態に至るまでに何が起こったのか、それを知る者はいない。
ただ、2人で倉庫に用具を取りに行ったきり、なかなか戻ってこなかったことがあった。
きっとそこに原因があるのだろうが、誰も触れられないままでいる。
「長太郎。そんなに俺のこと好きなのかよ?」
「はい!大好きです!」
試すような岳人の口ぶり。
真っ直ぐに挑む鳳。
2人の間には、どうやら見えない取り引きがあるようだ。
「んじゃ、タオル持ってこいよ」
「すぐ持ってきます!」
走り去る犬。すごいスピード。
岳人は鳳の後ろ姿を見て、ニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。
この取り引きが何なのか、
それを暴くにはもう少し時間がかかるようだった。
fin.