□好きだから
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「今日も部活頑張ろうぜっ」


明るく声を掛けて来たのは俺の好きな人。
俺の恋人でもある。



「そうですね向日さん。大会まであと少し、頑張りましょう」



途中からだけど、こうして二人一緒に登校出来るのは嬉しい。

前は遅刻魔だった向日さんも、今では俺と登校できるよう、頑張って早起きしているようだ。





部室でユニフォームに着替えたら朝練の始まり。

向日さんは今日も朝から無駄に跳びはねていた。
短所だけれど、そこがまた可愛いと思う。


「今日も元気いっぱいですね、向日さん」


鳳が声を掛けてきた。
律儀な奴だ。毎朝わざわざレギュラー全員に挨拶して。

良いところだと思うが、向日さんの恋人としてはあまり良い気がしない。



「おい長太郎っ!いつまで挨拶してんだ、早く練習すっぞ!」


「すみません宍戸さんっ、すぐ行きます!」


ここで宍戸さん登場。
二人とも恋人みたいに仲が良い。
宍戸さんと一緒に居ると鳳が大型犬のように見える。

それは俺だけじゃないはず。


「それじゃ俺はこれで。
あ、向日さん、そのタオル取って貰えますか?」
宍戸さんのタオルなんです、と向日さんの近くに置いてあるタオルを指差した。



「おうっ!任せ……っておい日吉?」


向日さんがタオルに手を伸ばしたとき、俺がタオルを先に取った。

当然向日さんは驚いて俺を見る。
鳳も目を見開いていた。


「日吉?」


「ほら、早く宍戸さんと練習してこい」



軽くタオルを投げると、それを受け取った鳳は何も言わずに去っていった。

これはただの嫉妬。
向日さんがわざわざ動くことじゃない。
他の男のために動かなくてもいい。



「お前らさっさと練習しろよ」

「お、跡部。お前昨日部室にリストバンド忘れてっただろ」


今度は跡部さんか。
向日さんは親切心でリストバンドを渡そうとする。


「ん、悪い」

「気をつけろよ?次忘れてっても渡してやんねぇから……って…日吉?」



向日さんはまた驚いた様子。
また俺は リストバンドを奪い取って跡部さんに渡した。


「日吉。拾ったのは岳人だろうが」


なぜお前が俺に渡す?と続ける跡部さん。
なぜ、って。
向日さんの手をわざわざ汚したくないからですよ。


「そうだよ日吉。なんでお前が渡す
んだよ?さっきから。訳わかんねぇっ」



あぁ、向日さん怒った。
いつの間にか跡部さんは居なくなってて、部室前には俺達だけとなる。



「好きだから、です」


「…は…?」



「好きだから、向日さんのすることがしたくなるんです」



青い空は今日も澄んでいる。
清々しい風と一緒に。



「…理由になってませんね」


単に言えば嫉妬です、と言葉を紡ごうとした時、俺の口は塞がれた。

向日さんの柔らかな唇によって。







「…………向日さん?」


不意のキスで赤面を隠せない。
ようやくキスが終わったとき、向日さんを見下げる。



「……俺も日吉が大好き過ぎてキスしたくなった」


ダメか?と見上げてくる。
その上目使いは狙っているのか、自然のものか、


今はそんなの関係ない。









「あんたは……っ」








ほんっとに可愛い人ですね。

したいなら言ってくれれば俺からするのに。


もっと甘いものをね。



俺もあんたにたくさんキスしたいんですよ。





















──好きだから──
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