□ジグソーパズル
1ページ/3ページ




───だからさ、この真ん中は───









「…ん。朝か…」


今日は休日。
それなのにいつもと同じ時間に起きちまった。


「あの夢…確かガキの頃の…」


今みた夢は確かに、俺がガキの頃の夢だった。


あの頃は岳人とジロー、それから滝とばっかり遊んでたっけ。
特に岳人とは毎日遊んでた記憶がある。



「……あのジグソーパズル」


夢に出たジグソーパズル。
あれは岳人とやった150ピースのやつだ。

確かまだ持ってたはず。
あのパズル、完成したっけ。

ふいに気になって、引き出しを漁る。




「あ……った」


何分もしないうちに探し物は見つかった。


額に入れられたジグソーパズル。
これは間違いなく、俺と岳人が作り上げたものだった。


でも…、


「1ピース足りねぇ」



真ん中の1ピースだけがなかった。


この真ん中の…、

どうしたんだったっけな。





真ん中ってのは、
俺にとって重要なもの。
いつだって氷帝の真ん中で笑ってる岳人みたいだから。


昔は俺や滝に守られてばっかりだったのにな……。



──岳人。またイジメられたのか?──


──…ん。おれが女みたいだから…──



こんな会話。
今じゃ考えられないくらい強くなっちまったんだな。



岳人が強くなればなるほど、俺と岳人の距離は離れて行った。

その証拠に、俺のことを名前で呼ばなくなった。


岳人が強くなって嬉しくない訳はない。


ただ、少し淋しい。
それだけ。


多分、滝やジローも同じなんだと思う。











「しーしーどっ」

「うおぁあああ!?」


突然の声に、俺は反対側の壁まで動いた。

我ながら激ダサなリアクション……。


俺に声を掛けてきたのは、


「……岳人」


たった今まで、考えていた人物。
驚かないはずがない。



「よっ。あ、ちゃんとおばさんに挨拶したからな?」


「分かってる。で?何しに来たんだ?」



俺の質問に、岳人の口元は緩んだ。



「夢見たから来た」



夢?と首を傾げると、岳人は頷く。






「俺達がパズルやってる昔の夢」



こんなことが起こるのか。
二人同時に、全く同じ夢を見た、なんて。



「だから、思い出して部屋ん中探したらまだあった」


話しながら岳人がポケットから取り出したのは……。




「ほらよっ、最後のピース」



「お前が持ってた…のか」



驚いて次の言葉が出ねぇ。



「お前が俺に渡したんだからなっ」


「俺が?」


なんで?と続ける。


「お前覚えてねぇのかよ?
まあ良いけど。
お前が[最後のピースを渡すから、強くなったら返しに来い]って言ったんだよ」



──強くなったら──



「なんか…思い出してきた…」






──────
─────────



『岳人、お前はもっと強くなれる』

『おれが?もっと強く?』


幼い岳人はいつも泣いていた。
今思えば、あのイジメは好きの裏返しだったのかも。
みんな岳人のこと好きだったんだな。



その日も、いつものように俺が守ってやっていた。


『あとで、俺ん家来い』


岳人の頭を撫でて、そう言った。
岳人は弱々しく頷いて、下校した。




『おじゃまします』

『おう』



すぐに岳人は来た。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ