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□ジグソーパズル
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───だからさ、この真ん中は───
「…ん。朝か…」
今日は休日。
それなのにいつもと同じ時間に起きちまった。
「あの夢…確かガキの頃の…」
今みた夢は確かに、俺がガキの頃の夢だった。
あの頃は岳人とジロー、それから滝とばっかり遊んでたっけ。
特に岳人とは毎日遊んでた記憶がある。
「……あのジグソーパズル」
夢に出たジグソーパズル。
あれは岳人とやった150ピースのやつだ。
確かまだ持ってたはず。
あのパズル、完成したっけ。
ふいに気になって、引き出しを漁る。
「あ……った」
何分もしないうちに探し物は見つかった。
額に入れられたジグソーパズル。
これは間違いなく、俺と岳人が作り上げたものだった。
でも…、
「1ピース足りねぇ」
真ん中の1ピースだけがなかった。
この真ん中の…、
どうしたんだったっけな。
真ん中ってのは、
俺にとって重要なもの。
いつだって氷帝の真ん中で笑ってる岳人みたいだから。
昔は俺や滝に守られてばっかりだったのにな……。
──岳人。またイジメられたのか?──
──…ん。おれが女みたいだから…──
こんな会話。
今じゃ考えられないくらい強くなっちまったんだな。
岳人が強くなればなるほど、俺と岳人の距離は離れて行った。
その証拠に、俺のことを名前で呼ばなくなった。
岳人が強くなって嬉しくない訳はない。
ただ、少し淋しい。
それだけ。
多分、滝やジローも同じなんだと思う。
「しーしーどっ」
「うおぁあああ!?」
突然の声に、俺は反対側の壁まで動いた。
我ながら激ダサなリアクション……。
俺に声を掛けてきたのは、
「……岳人」
たった今まで、考えていた人物。
驚かないはずがない。
「よっ。あ、ちゃんとおばさんに挨拶したからな?」
「分かってる。で?何しに来たんだ?」
俺の質問に、岳人の口元は緩んだ。
「夢見たから来た」
夢?と首を傾げると、岳人は頷く。
「俺達がパズルやってる昔の夢」
こんなことが起こるのか。
二人同時に、全く同じ夢を見た、なんて。
「だから、思い出して部屋ん中探したらまだあった」
話しながら岳人がポケットから取り出したのは……。
「ほらよっ、最後のピース」
「お前が持ってた…のか」
驚いて次の言葉が出ねぇ。
「お前が俺に渡したんだからなっ」
「俺が?」
なんで?と続ける。
「お前覚えてねぇのかよ?
まあ良いけど。
お前が[最後のピースを渡すから、強くなったら返しに来い]って言ったんだよ」
──強くなったら──
「なんか…思い出してきた…」
──────
─────────
『岳人、お前はもっと強くなれる』
『おれが?もっと強く?』
幼い岳人はいつも泣いていた。
今思えば、あのイジメは好きの裏返しだったのかも。
みんな岳人のこと好きだったんだな。
その日も、いつものように俺が守ってやっていた。
『あとで、俺ん家来い』
岳人の頭を撫でて、そう言った。
岳人は弱々しく頷いて、下校した。
『おじゃまします』
『おう』
すぐに岳人は来た。