H
□また明日
1ページ/2ページ
「なあ滝」
「ん〜?」
夕日に染まる帰り道。
いつも通り、俺は滝と肩を並べて帰路につく。
「ほんとに俺のこと好き?」
最近気になっていた疑問。
あんまりそういうのを口に出さないのが滝だ。
分かってても不安になってしまう。
滝は唖然とした目で俺を見た。
そしていつもの不敵な微笑みを浮かべる。
「岳人は俺のこと好き?」
「あ、当たり前だろっ」
「それと一緒だよ」
頭を撫でられた。
満面の笑みは前髪で少し隠れて、それがまた綺麗で。
俺はつい見とれてしまう。
子供扱いは嫌だけど、なんか怒れない。
怒る気分になれない。
女々しいかな、俺。
自分に嘲笑して、滝を見つめた。
こんな感じで、怖いくらいどんどん好きになっていく。
「[また明日]って言うの寂しいかも。
一緒に居る時間はあっという間だしよ」
夕日とは逆の方角を見る。
人工物が反射して眩しい。
「そうかな?」
「ああ」
俺はそう思わないなぁ、と心地いい低めの声が聞こえて、思わず振り返った。
「[また明日会える]って、すごい幸せなことだと思わない?」
「……ッ」
滝はすごい。
俺を納得させることができる。
簡単で深い言葉をたくさんくれる。
道を見失うと簡単なことが分からなくなる。
滝はそんな俺を助けてくれる。
また少し、滝を好きになる。
この少しが集まって、大きな気持ちになる。
それなら今日から、[また明日]が楽しく言える。
二人の時間は短く感じて、あっという間に家の前。
「また明日な、滝っ」
「また明日、岳人」
いつもみたいに目を細めて笑う滝。
手を振りながら限界を開けた。
ドアが閉まる直前、滝の口が動いたのが見えた。
なんて言ったのか、はっきり聞こえた。
不覚にもまた、滝を好きになった。
─大好きだよ、岳人─
END