□子供扱い
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「お坊ちゃま」

「アーン?」


「今日もブラックコーヒーでよろしいでしょうか?」

「ああ。
あと、こいつにイチゴパフェを頼む」

「畏まりました」


漫画やアニメではよくある非現実的な会話。

これは間違いなく"お坊ちゃま"と"執事"の会話。



「おい跡部!子供扱いすんな!」


跡部に食ってかかるのは向日岳人。
部活の仲間であり、彼の恋人でもある。

同い年なのに子供扱いされるのが気に入らない様子。



「俺だってブラックコーヒーくらい…」

「嘘つき。飲めねぇだろ?」

「う……っ」


完全に言い返せなくなる。
図星なのを隠すように、岳人はオレンジジュースを一気に口に含んだ。


何語で書かれているのか分からない新聞を広げて、運ばれてきたコーヒーを片手に椅子に腰掛ける跡部。

ちらりと見やると、その姿が悔しいくらい絵になっていて再度目をそらす。


「せっかく遊びに来たのに…」


ぼそりと口にしたつぶやきは、広い部屋に消えた。

せっかく休みを利用してきたのに、構って貰えないなんて。

岳人は手持ち無沙汰に、パフェのクリームをスプーンに乗せてみる。

口にいれると、甘い食感が口いっぱいに広がる。


「うまー…」

「ぶっ!」


また小さくつぶやくと、隣から笑い声が聞こえた。


「な、なんだよいきなり…」

「お前、どんだけ構って欲しいんだよ」


腹を抱えて笑う跡部。
みるみる赤くなる岳人。


「か、構って欲しくなんか…っ」

「岳人、さっきから独り言言いすぎ」



またなにも言い返せなくなった。

照れ隠しにカップに残された溶けかかっているアイスを一気に口に流し込んだ。


子ども扱いばっかり。
いつも跡部のほうが一枚上手。

それでも一緒にいたいと思うのは、
もう跡部の虜になっている証拠。


諦めた方がいいかもしれない。
素直になった方が良いかもしれない。




子ども扱いされても……





「うっせー!寂しかったんだよ!悪いか!」



一生一緒にいようと思う休日。




返事はもちろん、優しい笑顔で帰ってきた。


 
fin
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