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□小さな幸せ
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「滝の書く字ってさ。
なんか滝そのものだよな」
今日は水曜日。
学力テストが近いこともあり、部活が無いのを利用して、岳人に勉強を教えている。
俺が教科書を見ていると、
不意に岳人がそう言った。
「そう??」
岳人が突然何かを言い出すことはよくあるせいか、最近では耐性が付いてたいていは驚かない。
「おうっ。なんか丸くて、でもしっかりした綺麗な字」
そこまで言われると照れてしまう。
「なんだか照れちゃうよ」
「滝も照れるんだなーっ」
今まで俺をなんだと思ってたの?
とか咄嗟に思ったけど、
可愛いから許してしまう。
「岳人の字も岳人そのままだよね」
「ガサツってことかよっ!」
「あながち間違いじゃないよね」
やっぱり岳人と話すのは楽しい。
いつも他の人に囲まれて人気な岳人。
自分の好きな人が誰かに取られないか、いつも不安で仕方ない。
誰かと話しているのを見る度に、嫉妬してしまうんだよ。
でもそうやって嫉妬するのは、すごく幸せなことだと思ってる。
今みたいに好きな人と一緒に勉強できるのも幸せ。
日常の中で、こんなにも幸せがちりばめられている。
「やっぱり、俺は幸せ者だよね」
「??」
そうだよ。
この笑顔を見れるだけで俺は───、
「ねえ岳人。俺達、友達だもんね?」
「何言ってんだよ。当たり前だろっ?」
たとえ俺の一方通行でも。
一生振り向いて貰えなくても。
男同士でも。
俺は──。