□繰り返す 何度でも
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「よっ、来てやったぞ」



最近、毎日のように聞こえる声。
病室の入り口を見やると、サラサラな赤い髪を揺らした小柄な少年。

少年といっても、俺と同い年なんだけれど。




「向日…今日も来てくれたんだ」



”嫌なのか?”

 

俺がそう言うと、決まって彼はこう返す。


そうして俺が


”そうじゃない”


と答えると、


”じゃあいいじゃん”


って言うんだ。





俺の命は残り少ない。
今度の手術が成功しない限り。


そんな時、氷帝の向日はいつの間にか俺の病室に現れるようになった。


悪いからいいと言っても、”俺がそうしたいんだから”と収められてしまう。

俺の命が少ないと知った友人達は、俺から逃げるように見舞いに来なくなった。


来たとしても”がんばって”とか、”出来れば代わってあげたいよ”とか、上辺だけのことしか言わない。


でも向日は違った。


”早く治せ”とか、ほかの人とは違う、[何か]を感じた。


彼が毎日、わざわざ隣県まで来てくれる意味は分からない。


だけど、向日といる時間は心地よくて、最近じゃそれが当たり前のようになってしまった。



向日は俺の病気のことを知っているはずだ。



でも、俺の居場所がなくなりそうで聞けなかった。





「じゃあ、そろそろ帰るな」


しばらく他愛のない話をしていると、向日が突然口を開いた。


気がつくと、
時計の針は彼が来た時刻の3時間後を指していた。



「やっぱ向日といると時間がすぎるのが早いね」


帰り支度をする彼の横顔に呟く。


「そうだな。俺もそう思う」


少し切なげな向日の瞳。
大きく胸が高鳴った。







夕日に映る彼の瞳が、
こんなに綺麗だなんて──。










「じゃあな幸村。明日こそ治せよな!」


無邪気に笑う彼に微笑み、手を振った。










このまま彼を帰らせてしまったら…


俺は一生後悔する…──。












ただの勘。
だけどその勘には、妙な確信があった。





気がつくと、ベッドから飛び出していた。




今日を境に向日が来なくなってしまうのではないか──。



点滴も腕からはずれたけれど、そんなのどうだっていい。



今気づいたこのきもちを、
今君に伝えたくて。







「向日!」


廊下に出ると、赤い髪の少年が振り返った。

それと同時に、驚きを隠せないようで目を目いっぱい広げた。


「幸村!?何やってんだよ!?」

心配に顔を強張らせ、俺のほうに駆け寄ってくる。





「あのね・・・・俺」




”向日のことが好きみたいなんだ”

























あの時告白していなかったら、


「俺は今頃ここにいなかっただろうね」


「はあ?なに言ってんだよいきなり」



麗らかな春の日差しに身を任せて、俺は呟いた。


返って来たのは俺の恋人の声。











俺の生きる意味。
今ならはっきりと分かる。




「俺は君のために生きてるんだ」


「なっ、なに恥ずかしいこと…っ」



赤くなる恋人のやわらかい髪を撫で、目を閉じた。









繰り返す、何度でも







愛してるよ、俺の命を救ってくれた恋人──。
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