短文。

□Loveless
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―――昔、誰かが言っていた言葉を思い出した。





【恋は人を変える】





誰が言っていたのかなんて覚えていなかったし、この言葉自体すっかり忘れていた。


僕にはそんなものよりも強さの方が大切だったから。



誰よりも強く

昨日の自分より強く

今日の自分より明日の自分はもっと強く

近藤さんの側にいるために

近藤さんの役にたつために



そうして刀を振るい続けてきたのに。




そんな僕を変えた君―――。






ある日の午後―――今日はもう特にすることもなかったから千鶴ちゃんを連れて京の一角にある茶屋にいた。


「すみません。沖田さん、お疲れなのに私なんかに…」

「そんなこと言ってないで早く食べなよ。今日はいつも頑張っている千鶴ちゃんへのご褒美なんだからさ」

「…はい。それじゃあ、いただきます」


『ご褒美』なんて、二人で出かけるためのただの言い訳だった。


屯所にいたら他の奴らが邪魔で、二人で過ごすなんて出来ないから必然的に外に出るしかない。
でも千鶴ちゃんが僕の巡察に同行できる回数なんてたかが知れてる。


だから僕にしては珍しく頭を使って一緒に外出できる理由を考えた。
結果、今みたいな『ご褒美』なんて、なんの口説きにもならない小さな口実。


でも千鶴ちゃんは恐縮しっ放しで、少しでも喜んでくれるかな?なんて考えていた僕の小さな期待を見事裏切ってくれた。


自分が考えていたよりも落胆しているのに気付いていたけど、ここで僕が不貞腐れるのは千鶴ちゃんになんの落ち度もない以上お門違いだし、彼女を困らせるだけだ。


そう思っていつものように作り笑いを張りつけるけど、今日ほどそれが難しいと感じたことはなかった。




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