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□クリスマスキス〜後編〜
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ゲームセンターを後にした僕は千鶴ちゃんを自宅へと送り届けた。いつもは駅までだけど、結局いつもと変わらない時間しか一緒にいられなかったから今日だけはどうしてもそうしたかった・・・もう少し二人でいたかった。



でも楽しい時間なんてあっという間で、気づけば千鶴ちゃんの家の前に着いていた。




「今日はありがとうございました。」

『こちらこそ、ごちそうさまでした。』

ポケットに入れていたシールをひらひらと振ると、それを見た千鶴ちゃんは顔を赤く染めて「・・・意地悪」と小さく呟いた。



その頬を見て、思い出した。



『あ、そうだ。手、出して。』

「手?」

『これ、クリスマスプレゼントね。』

バッグの中に入れていたせいで少し形が崩れてしまった包みを、千鶴ちゃんは驚いた表情で見つめていた。

「でも先輩、プレゼントは要らないって・・・。」

『うん。マフラー貰ったし、「僕は」、要らないって言ったね。』

「先輩の意地悪・・・。」

『サプライズ、ってヤツ?それとも嬉しくなかった?』

わざとそう聞くと千鶴ちゃんは首を振って、そして嬉しそうに笑って「開けてもいいですか?」なんて聞いてくる。



本当なら【それ】に気付いた時の顔を見てみたかったけど、そうじゃなかったら落ち込みそうで。



『・・・僕がいないところで開けて。』

「どうして?」

『・・・いろいろと・・・思うところが、あるから・・・です。』



歯切れの悪い僕の言葉に首を傾げながら頷く千鶴ちゃんはその包みをバッグに入れて、もう一度「ありがとうございます。」と頭を下げた。



『今度はちゃんとデートしようね、千鶴。』

「はい、楽しみにしています。」



本当は名残惜しくて繋いだ手を離したくはなかった。最後にもう一回抱きしめたいなとも思ったけど、近所で変な噂がたったりしたら千鶴ちゃんが困る気がしてできなかった。



千鶴ちゃんを気遣うフリをして誤魔化していると、胸元にトンと軽い衝撃を感じて。



驚いたけど、うれしくてそれを抱きしめた。



『千鶴は時々大胆だね。』


「今日はクリスマスだから、です。」


『僕はいつでも大歓迎だけど?』


「いつもはせんぱ・・・総司先輩がしてくれるからいいんです。」


『クリスマス限定?』


「・・・女の子は【限定】が好きなんです。」


『じゃあここは千鶴限定だね。』



いつもは恥ずかしがってなかなか寄り添ってくれない身体を強く抱きしめた。




そうしているとコートの襟を引く気配がして、そのまま顔を近づけた。




背伸びをした千鶴ちゃんの唇がそっと触れてゆっくりと離れていく。




「・・・ここも。」


『うん。ここも千鶴限定。』




そうして僕たちはもう一度唇を重ね合わせた。




ただ触れるだけのキスだったけど、今までしたどんなキスよりお互いの想いを伝えてくれた気がした。






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