想いの行方(仮)

□久しぶりの温もり
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「「いっただきま〜す!」 」



屯所の広間に響く元気な掛け声(特に約二名の)が合図となりで朝食となった。

そこにあるのはいつもと変わらない顔ぶれ。

上座には土方さんがいて、私の向かい側には斎藤さんと沖田さんがいる。
そして私の右側には永倉さん、平助君が座り、左には原田さんという以前と変わらない並び。

でもずっと避けてきた男の人に挟まれるこの席は、今の私にはただただ辛いだけのものでしかない。

本来なら幹部でも隊士でもない私は末席―――原田さんの左側に座らなければならないはず。
なのに、この三人は気にならないのか、私が初めて広間で食事を取ることになったときから当たり前のようにこの場所を勧めてくれた。

それはあの時の私を思いやってのことだと、しばらくしてからわかったけど、今はその心遣いがちょっと恨めしかった。

みんなの気持ちをそんなふうに思うのが自分勝手で嫌で醜くて、つい溜め息を吐いた。


「千鶴が広間でメシ食うのって久しぶりだよなぁ」

「…うん、そうだね」

「なんだなんだぁ、朝からそんな浮かない顔して。メシが足りないなら俺様のを分けてやろうか?」

「うわっ。新八っつぁんがんなこと言うなんて、今日は雪でも降るんじゃねぇの?」

「んだと、平助!」


永倉さんの言葉がきっかけとなり二人はいつものようにおかずの奪い合いを始めてしまった。

浮かない顔をしていたつもりはないけど、私のせいでこんな展開になってしまった申し訳なさから、なんとか争奪戦を止めようとした。


「あ、あの二人とも…喧嘩は…」

「ほっとけよ、千鶴。あれはあいつ等の年中行事みてぇなもんだからな」

「原田さん。…でも」

「んなことより、もう大丈夫なのか?」

「え?」


いきなり大丈夫かと聞かれ、話が見えなくて首を傾げる私を見て、内緒話をするように耳元で囁かれた言葉に驚いた。






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