短文。
□たった一つの
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平和っていいよね
火照りを持て余す小さな身体を抱いて呟かれた言葉
ニュースを見れば毎日のようにどこかで誰かの死亡情報が流れ
それが自分にならないという保証はない
それでも
あのとき
あの時代
もしかしたら隣に並ぶ仲間が
ともすれば自分が
明日にはいないかもしれない
そんな時代を駆けてきたからこそ
平和っていいよね
もう一度漏れた言葉に
小さく首を傾げる温もりを抱き寄せた
ようやく手に入れた
誰のものでもない
自分だけの
ただ一つの
しっとりと貼りつく黒髪をそっと梳いて
指の合間からさらりと流れる
それは昔から変わらない
白い肌をより白く
乱れた身体をより淫らに見せる
その一筋すら愛しくて
そっとキスをして
唇にも
。