想いの行方(仮)
□こたえ
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正直、おもしろくない。
もうあんなことはしないって言ったのに。
皆には少しずつ歩み寄る努力っぽいものをしているくせに。
僕だけには顔を見るなり逃げ出したりするんだから。
不確かだった気持ちの在処。
最初は自分でも信じられなかったけど、それがちゃんとした形になったのは千鶴ちゃんと平助が楽しそうに話しているところを見た時。
気に入らない
苛々する
平助と左之さんとは普通に話すくせに
なんで僕には…
胸の中はどす黒いものでいっぱいになって、締め付けられるように痛くて。
頭の中で千鶴ちゃんにさえ悪態をつく始末。
それに朝食で左之さんとはあんなに親しげにくっついて話したりして。
それを見てつい本気で殺気立ってたら……あの時の顔が頭から離れない。
それから落ち込んだりもしたけど、平助と二人で笑いあっているところを見たら、このままじゃ駄目だと思った。
いつかこの気持ちがあの子のなかで無いものにされて、あまつさえ違う誰かに奪われでもしたら…そう思ったら落ち込んでなんていられなかった。
このままじゃいられないと思った。
逃げられたら追いかければいい。
忘れられそうになったらまた伝えればいい。
遠慮とか、僕らしくない。
好かれてはいない。
むしろ嫌われているんだと思う。
毎回逃げられていればそれくらいのことは誰だって予想できる。
でも
それでも諦めるという選択肢が自分の中に欠片も無かったから。
何もせずに見ているだけで、ほしい場所を奪われるのはもう嫌だから。
もう誰にも譲れない。
近藤さんの時は自分からこの位置に甘んじた。
あの人には敵わない、なんて卑下た考えからじゃない。
ただ自分にできることで近藤さんの役に立てればいいと思ったから。
でもあの子は違う。
あの子の隣も
身を任せる存在も
心を許す存在であることも
―――譲れない。
自分でも驚くくらい、そう思った。
。