想いの行方(仮)

□笑顔の威力
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明るい時間に、一人で京の町を歩くのは久しぶりかもしれない。

朝も昼も夜も関係なく、隊を率いて巡察をしている町並みは、いつもより浮き足だって見える。

それもそのはず。なぜなら、僕自身が浮かれているから。

最近、あることが立て続けに起きているおかげで精神的に疲れていた僕を見かねて、近藤さんがお茶に誘ってくれたから……というのは僕の勘違いかもしれないけど。

ちなみに、今はそのお茶請けの買い出しの真っ最中。

近藤さんだって暇なはずないのに、それでも僕のことを少しでも気にかけてくれていた。
それだけで疲れのほとんどが吹っ飛ぶくらい、嬉しかった。

残りの疲れ?

それは、日頃悩んでいることが近藤さんとのお茶だけで一気になくなるというなら、僕は今まで悩んだりしていない。

相変わらず、悩みは尽きない。

吐いた息が、白く煙る。

まだまだ、これからが冬の本番。
太陽が顔を出している時間でも、それなりに寒い。

あれから、そんなに時が経っているわけでもないのに、状況はかなり変わった。


(…違うか)


僕が、変えた。

もしあの時に戻ることができるのなら、馬鹿なことをするなと自分を止めたい。

あんなことをしなければ、今でも時々は遊べたかもしれないのに。

本人はよしとしないだろうけど、あの時までの僕はそれでよかった。

楽しかった。

なのに今は、楽しいことなんてほとんどない。

『辛い』ばっかりが先に立つ。

すぐそこにあるのに、手が届かないばかりか、手を伸ばすことすらできないんだから。

それは精神的にくる。
想像以上だ。

いつか左之さんが言ったように、僕の完全敗北。
もうこれ以上は、何をしても無駄。

そう答えが出た。

示された。

最初のきっかけから終わりまで、案外早かったな…。

困らせて、追い詰めて、無理をさせて。

最後に泣かせて。

そこまでさせなければ分からなかった。

最初の時からずっと、僕に勝ち目がないことを。

なにも知らなかった頃に戻れたら、僕も千鶴ちゃんも、お互いのためだったのかもしれない。

こんな風に、自分の行いを省みることも、なかったのかもしれない。

でも、もしかしたら目の前で誰かに奪われていたかもしれない。

そしていつか自分の気持ちに気が付いて、後悔るすのかもしれない。

結局、いつか後悔することになるのは変わらないけど、何もせずにただ後悔するだけ、なんて最悪すぎる。

だから、そんな状況にならなかっただけまし……まだ諦めきれないけど、やれるだけのことをやって駄目なら仕方ない……今はそう思い込むことで自分を納得させている。

早く忘れたい、何を見ても動じたくない、と願って心がけている時点で、ぜんぜん昇華しきれていない僕が、いつそう思えるのかは謎だけど。

もう一度、白い息を吐いた。

とりあえず今は、何を買って帰るかを考えよう。

いつもなら、近藤さんからの誘いだったら嬉しいはずなのに。
何を買うか、悩んでいる時間すら楽しいくらいなのに。

同じ『悩む』という行為をしているせいか、浮かんでくるのはやっぱり彼女のことだけ。







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