短文。

□甘い悪戯
4ページ/6ページ






金平糖がなくなるころに唇を離せば、ずっと息を止めていたらしい千鶴ちゃんは肩で息をしていた。
口端から二人の混じり合った唾液が伝っていることにも気付いていない。


『…千鶴ちゃん。息しないと保たないよ?』

『…や、止めて、下さ…』


それを舐めとって耳元で囁けばピクリと身体を震わせ、涙が浮かぶ瞳で縋るように見上げてくる。

その仕草はまるで誘っているようで―――

ちょっと意地悪するつもりだったことなんてすっかり頭から消えていた。


『甘味をあげないと悪戯されちゃうんでしょ?』

『…や、ちがっ…』


ふるふると首を振って否定するその仕草も、力の入りきらない腕で僕の胸を押すその頼りなさも僕を煽るだけで…。
正直、止めるという選択肢は僕にはなかった。


『僕と同じようにしてごらん』

『んぅ…、ぁ……ふぁ…』


金平糖を再び口に含み彼女に口付けると、今度は遠慮がちに舌を絡ませてくる。

硬い金平糖のせいで舌の柔らかさが余計に感じられて、年甲斐もなく夢中になって舌を合わせ続けた。


『…うん、いい子だね。ほら、もう一回』


まだ上手く呼吸が出来ない千鶴ちゃんのために唇を放してそう囁けば、今度は彼女のほうから唇を合わせてきた。


『…ぁ…ふ、…んん、』


先ほどより積極的に自らの舌を絡ませてくる千鶴ちゃんの顔を盗み見ると、形の良い綺麗な眉を歪ませて。
でもその顔は感じているときのそれで…。

まだ幼い、『少女』と呼べる彼女に身体が熱くなるのを感じた。

長い口付けに耐えきれず崩れ落ちる千鶴ちゃんを支えるように横抱きにすると、力が入らない身体を僕の胸元に預けた。

瞳をきゅっと瞑って口付けの余韻から逃れようとしている様子はとても煽情的で、こくりと喉が鳴った。


『…美味しかった?』

『や…、知り…ませ…』

『じゃあ、気持ちよかった?』

『!!っ気持ち…良く…な…』


僕の胸元に顔を埋めたまま首を振って否定してもそれは説得力のない言葉だ。

肌に触れる彼女の熱い吐息が全身を粟立たせた。


『そう?…ねぇ、もっと気持ちいいことしようか?』

『…え?』


先程の口付けで濡れた唇を拭って、その手を頬から首筋へ滑らせ、そしてささやかな膨らみに触れた。


『…ゃ、沖田さ…ん、あっ』


びくんと大げさなほどに身体を震わせ、力が入らない手で僕の腕を離そうと必死に抵抗しても力の差は歴然で。


『ね、しよう?』

『だ…め、です……んっ』


服の上から触れていた手を動かした先に気付いたのか、着物の合わせを掴んで必死に拒もうとする。


『…手、退けて』

『やっ、…だめ…おきたさ…』






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ