短文。

□Loveless
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やがて口に含んだ団子を嚥下した千鶴ちゃんは驚きの声と共に僕が一番好きな顔を向けてくれた。


「…あ、美味しい」

「でしょう?ここの団子、美味しいから結構人気なんだよ」

「わかる気がします。とっても柔らかいし、味も甘すぎないし」


やっと見せてくれた華のような笑顔にほっとして、僕も同じ団子を口に運ぶ。
折角一緒にいるんだから千鶴ちゃんの感じているものは全て共有したい、なんて、子供染みた独占欲もあった。


全てが自分らしくないと思った。


「気に入ったなら今度は違う味のをお土産で買っていこうか?」


…こんな事を口にする自分も。


「え?そんなつもりで言ったんじゃ…」

「いいんだよ。さっきも言ったでしょう。いつも頑張る千鶴ちゃんへのご褒美だって」


違う味とはいえ同じ物だなんて芸が無いと思ったけど、じゃあ他に何かあるのか、と考えても何も浮かばない。
今までこんなふうに異性に喜んでもらいたい、なんて考えずに生きてきたから。


…そんな自分をちょっと呪った。


でもきっと千鶴ちゃんは同じ物でもまた喜んでくれると思った。
…いや、思いたかったのかもしれない。


「…それとも、僕からのお土産なんて迷惑?」


そんな消極的な考えを否定してほしくて僕らしくない言葉をつい口に出してしまった。


「いいえ!嬉しいです!」

「そう?ならよかった」


千鶴ちゃんの笑顔が嬉しくてまた一つ団子を口にする。
美味しいとは思えても緊張のせいか今日はうまく味わえない甘さ。
それをお茶で流し込むと、なんだか考え込んでいるような千鶴ちゃんが目に入った。


「…あの、沖田さん。これ、少し買ってきてもいいですか?」

「今日食べるの?それに欲しいなら僕が買ってあげるよ?」

「いえ…、私じゃなくて土方さんにです。最近忙しいみたいで食事もろくに取ってくださらないので、これならお茶と一緒に召し上がっていただけるかな、って」


彼女の口から発せられた「土方さん」という響きに、浮上した機嫌が一気に下降したのがわかった。




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