短文。

□Loveless
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…どうして今、この時に、よりによってあの人の名前が出てくる?


確かに千鶴ちゃんは土方さんの小姓という立場で、平隊士にもそう認識されている。


でもそれはあくまでも上辺だけのことで、僕を含め幹部の誰もが彼女をそんなふうに見ても扱ってもいない。


…なのに千鶴ちゃんが考えていることはいつもあの人のこと。
千鶴ちゃんが向ける視線の先にいるのはいつもあの人だけ。


そんな彼女に気付いたのは僕がこの想いに気付く前だったかもしれない。
自分の気持ちに気付く前に結果の見えている想いなんて何度も諦めようとした。


でもこの想いだけは譲れなかった。


僕が欲したもの全てを持つあの人にだけは―――。


なのに千鶴ちゃんは僕の気持ちなんて欠片も気付かないであの人のことばかり。




いつも、そして今も。




「あ、土方さんってお団子嫌いだったりするんでしょうか?」

「…さあ?嫌いじゃ無いんじゃないかな」


僕には見せたこともない顔で笑うのは、あの人のことを考えているからだろう。
そんな千鶴ちゃんの顔を見たくなくて顔を背けた。


「そうですか?じゃあちょっと買ってきますね」


そう言い残して千鶴ちゃんは店の中へと姿を消した。





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