想いの行方(仮)

□久しぶりの温もり
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「…総司のことだよ」

「原田さんっ、なんで知って!?」

「あのな、お前の態度はバレバレなんだよ。気付かねぇのはそこの二人くらいだぜ」


原田さんの視線を辿るとまだおかずを奪い合いしている永倉さんと平助君。

…ということは土方さんも斎藤さんも気付いていることになる。


(………そんな……うそ…。)


そんな可能性なんて欠片も考えていなかった…考える余裕が無かった。


「別になにがあったかまでは知らねぇし、聞く気もねぇけどよ。お前が少しでも元気になったんなら何よりだ」


今知った事実に混乱していると頭に乗せられた温かい手。
それは怖いはずなのに、そのぬくもりが優しくて…妙にくすぐったい。


「ありがとう…ございます」


だからちゃんと笑ってお礼を言いたかったのに。


……自分でも分かった。


…上手く笑えない。


この空間は久しぶりで、皆と顔を合わせるのが少し怖かった。
けど皆と食事をする事が嬉しくて仕方がなかったのも本当。

一人での食事は気温以上に寒くて、淋しくて…ここに来る以前の、家で父を待ち続けた孤独を思い出させて嫌だった。
…暖かいはずの汁物も心だけは温めてくれなかったから。

それでもやっぱり男の人、特に沖田さんの近くには居づらくてずっと避けてきた。

最近皆とろくに話していないことに私自身も気付いていたし、その事で心配をかけているだろうと自覚もしていた。


でも怖かった。


最近やっと仲良くなれたと思っていた人達は男の人で、あんな事が簡単に出来てしまうのだと。

女の自分がどんなに抵抗してもかなわないのだとわかったから。

自意識過剰だと笑われてしまうかもしれないけれど、皆があんな事を考えているのかもしれないと思うと怖くて仕方がなかった。

そんな私に、あの日沖田さんは頭を下げて説得をした。






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