想いの行方(仮)
□久しぶりの温もり
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「ごめん!謝ったからって許してもらえるなんて思ってないけど…ごめん」
「あの、頭を上げてください」
沖田さんは新選組の幹部で、しかも一番組組長だ。
そんな人が副局長付きのただの小姓に頭を下げた、なんて変な噂がたったりしたら大変なことになるということくらい、容易に想像できる。
確かに沖田さんは許しがたい事をしたけれど、だからって彼の立場を乱すことは本意ではない。
「…どうしてあんなことしたのか、聞いてもいいですか?」
「それは…」
沖田さんは気まずそうに視線を逸らしたまま黙った。
あんなことをされた私には聞く権利があるはずなのに、強気に出れないのはいつも「殺すよ」なんて脅されていたせい。
…そして先日の一件のせい。
沖田さんが言っていた通り自分から求めた記憶が…ある。
途中からわけが分からなくなって、何が何だか分からなくなって目の前の熱に縋り付いた。
でもそれも沖田さんが何もしなければそんなことにはならなくて、こんな思いをしなくてすんだはずだった。
皆を怖いと思うこともなかったはずだった。
だからそんなことになった理由を聞きたかった。
「…やっぱり教えてはいただけませんか?」
「そうじゃなくて…どう説明したらいいか分からない」
「分からないって…」
さっきからずっと黙ったままの沖田さんに問うとそんな曖昧な返事が返ってきた。
その顔色を窺うと本当に困ったような顔をしていて、分からない、と言った彼の言葉は嘘ではなさそう。
でも、こればかりは引き下がれなかった。
「でも、沖田さんが…したんですよ?」
「そう、なんだけど…。多分…千鶴ちゃんが他の奴と話したり笑ったりしているのを見るのが嫌だった…苛々したから…だと、思う」
。