想いの行方(仮)
□久しぶりの温もり
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「自分でもよく分からないけど」と告げられた感情…それは所謂…。
「…ヤキモチってことですか?」
「?餅なんて焼いてないよ」
「…餅」
…そんなことを言われるとは思わなかった。
おかげで初めて告げられた好意のはずなのに照れも感動もない…。
「…沖田さんって本当に好きな人がいなかったんですね。」
「何、それ?」
正直、沖田さんの言葉を信じていなかった。
だって私より年上なのに今まで好きな人がいなかった、なんて思うはずがない。
でも返ってきた言葉も、今のわけが分からないって顔も嘘じゃないとわかったから。
ここに連れてこられてからの短い付き合いでも、それくらいは知っていたから。
なのに素直に喜べないのはあの行為があったから。
どうして自覚していない想いに苛々して、私にあんな形でぶつけたんだろう。
普通は少しでも好意があれば優しくしたりすると思うのに。
…沖田さんってやっぱり変な人だ。
「…まぁ、いいや。それよりお願いがあるんだ」
「…なんですか?」
「そんなに警戒しないでよ。もうあんなことしないから」
「別に…警戒なんて」
『お願い』の言葉に無意識に距離をとった私に、沖田さんは傷ついたような苦笑を浮かべた。
…なぜだろう。
その顔を見ていると心が痛い。
さっきから感じるずきずきとした鈍い痛みがまるで私を責めているよう。
私は悪いことなんてしていないのに。
悪いのは全部沖田さんのほうなのに。
何度そう自分に言い聞かせても胸の痛みはなくならなくて、その痛みから逃れるように沖田さんから視線を逸らした。
「…お願いっていうのはさ、皆のことは避けないで欲しいってこと。口には出さないけど皆心配してる」
(…そんなこと、言われなくてもわかってる。)
でもやっぱり怖い。
どう頑張っても平静ではいられないから距離をおいているのに。
きっと男の沖田さんには分からないんだろう。
「皆はさ、君を妹みたいに思ってる。…僕なんかとは違って変な考えはしていないから…多分平気だよ」
なんか、とか変、とか自虐的な言葉が気になって顔を上げると、それと同時に視線を逸らされた。
…どうしてかな……それがものすごく…
……寂しい、なんて。
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