短文。

□キスの記念日
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唇に一瞬感じた微かな温もり

意外に思えるほど柔らかい感触

目の前にはいつも私をからかう瞳を彩る長い睫毛が伏せられていて

そして見えた翡翠色の瞳


…キス、された


そう理解した瞬間、一気に体温が上がった。


『真っ赤になっちゃって、可愛いなぁ』

『なっ、なにをっ…!』

『なに、って。わからなかったならもう一回しようか?』

『やっ!なに……んっ…』


パニックになっているとその腕に閉じこめられて、

驚いてつい顔を上げるとまた感じる唇への感触。

固まったままの私へのキスは

さっきよりも長く感じた。


『…二回目ももらっちゃった』

『ひ…ひどいです……こんなの…』

『これでも結構我慢してたんだけど。…イヤだった?』


先輩の問いかけにふるふると頭を振った。


…イヤじゃない。


…ただ


『先輩は…違うかもしれないけど……私は…初めてだったのに……』


初めてだったのに、キスの日のついで、みたいで


…それがイヤだった。


『……あのさ、ものすごい誤解があるようだけど…初めてだったんだけど、僕も』

『…え?』


嘘…と呟くと少し強く抱きしめられた。


『こんなことで嘘ついてどうするの』


そして押し付けられた胸元から聞こえる心音は私のものと同じくらい早い。

その音に不思議に思ってそっと顔をあげると…

見間違い?





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