短文。

□それは 甘く 甘い
2ページ/6ページ





沖田さんはいつも笑っているように見えるけど


それは

口元だけだって知ってる





怒っているときも


呆れてるときも


あまり見ないけど





悲しいときも





口元だけは笑っているから





だから目を見ればすぐわかる





そう口にした私に少し目を見開いて



『ふぅん。僕のこと、よく見てるんだね。





でも、嘘は言ってないよ』





沖田さんはまたおかしそうに目を細めた





『千鶴ちゃんが真っ赤なのも、可愛いのも本当。




…食べちゃいたいくらいにね』



『ひゃっ!』





言葉通り


鼻の頭を甘く噛まれて





驚いてあげた悲鳴にまた


おかしそうに笑う沖田さん





いつもいっぱいいっぱいの私と違って





いつも余裕で笑っているのが





悔しくて





『私は食べ物じゃありません』





…ちょっとした意趣返し





同じように鼻の頭を噛んであげた



『うわっ』



聞いたことがない声と


顔を離して見えた沖田さんにいつもの笑みはなくて





代わりにさっきよりも驚いた顔





『…千鶴ちゃん?』


『仕返し、です』





沖田さんの初めてを見ることができたことが
嬉しくて


おかしくて





知らずと笑みがこぼれる





沖田さんがいつも私をからかう理由





わかった気がします







次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ