短文。

□それは 甘く 甘い
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いつもと違う顔が見ることができるのは


自分だけ…


なんて





独り占め





それは私のせいで


きっと私だけのものだから





もうちょっと


そんな沖田さんを見てみたくなって


勇気をだして






唇を合わせてみる






―――それはさっき沖田さんがしていたような





触れるだけのもの








そっと唇を離すと


もっと驚いた顔をして


そして





『初めてだね。千鶴ちゃんからしてくれたの』





いつも以上の笑みを浮かべた





『いつも沖田さんに振り回されてばっかり、なんて悔しいですから。



仕返し、です』





なに、それ、と笑う


声とその顔は


見ている私が溶けてしまいそうなくらい




甘く




甘く









『…ねぇ。





もう一回、して?』





額を合わせて


小さく囁かれた


お強請りに





頷く代わりに





『…目、閉じてください』





見つめ合ったままは


まだ





恥ずかしいから…





そんな私をからかうことなく


静かに閉じた瞼に見えた


羨ましいくらい長い睫毛





…男の人なのにずるい








『そこじゃないよ』





知ってます





ちょっと意地悪をしたくなって


触れたそこは


唇の少し横





いつも私ばっかり意地悪をされて


どきどきされっぱなしは悔しいから





その浮かべた三日月に


お望みのものなんて




簡単には




あげないんだから





さっきまでの緊張が


嘘みたい





なんだか楽しくなって



二度




三度と





そこ以外に触れて





それでも瞳を閉じて


その瞬間を待っている沖田さんが


意外と可愛く見えて




今度は閉じた瞼に




ぴくっと震えた瞼を唇で感じて


小さく笑っていると





『…ちょっと……』




抗議の声





腰に添えられていた手に


ぐっと力が入ったのを合図に


ゆっくりとその距離を埋めた






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