短文。
□Secret Honey
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昨日の放課後、私は生まれて初めて想いを伝えた。
それを聞いたあの人は
―――うん、僕もだよ
そう言って今まで見たことのない顔で笑った。
でも何を言っているのかわからなくて、その顔を見ながらぽかんとしていた私を見て、一瞬にしてちがう顔に変わった。
いつもなら2、3歩後ずさりしてしまいそうな雰囲気に、その時の私は気づけなくて。
何回も何回も、さっきの言葉を反芻してようやく昇華しかけた私の唇に触れたもの。
至近距離で映る翠緑色と感じる柔らかさ。
『……ふ?』
え?と言いたかったはずなのに、違う言葉がでで来たのは出口が塞がれていたから。
…なに?
…なにが起きてるの?
何がなんだかわからなかったけど、いつもより遥かに近くに映る翠緑色が綺麗だったから。
つい瞬きも忘れて見いっていた。
やがてゆっくりと離れていく、男の人なのに妙に整った、たまに憎らしく感じる綺麗な顔。
『…え?』
今度はちゃんと言葉が出せた。
それで今のがなんだったのか理解した―――理解できた。
『…なんで、キス……?』
したの? されたの?
意味がわからなくて呆然と呟く私に、もう一度唇が重ねられた。
今度はただ触れるだけじゃなくて、唇を食べられてしまうように、でも優しく唇で挟まれて。
解放され震える私の唇。
かと思ったら、また甘く挟まれて。
何度もされているうちに開いてきたそこに今度は深く合わされた。
『っ、んん…っ!』
そして侵入してきた、熱く柔らかいものに舌を拐われる。
なんとか逃げようとしても、先を読んだように追いかけてきて。
必死に逃げ惑う私を叱責するように絡めとられた舌を強く吸われて――…・・。
うまく呼吸ができなくて膝に力が入らず崩れ落ちた私を抱き留めてくれる、たくましい腕。
…どうして?
…こんなこと
……夢、なの?
『…夢じゃないよ』
ぼんやりと見上げるその人は綿菓子みたいに甘くふわりと笑っていた。
…うそ
…夢じゃなかったらどうしてそんな顔で笑っているの?
今まで見たことがない、そんな優しい顔で。
『じゃあ、夢じゃないって証拠。次にここに来たときに――…』
額を合わせてそう口にした言葉は……。
。