短文。
□Secret Honey
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『じゃあ、今日はここまで。』
キーンコーンカーンコーン――…・・
まるで計ったかのように言葉の直後に鳴り響くチャイムの音に、ハッと顔を上げた。
一気に覚醒した意識に、ここが教室で今まで授業中だったことを思い出す。
(えっ?あれっ?終わったの?)
授業が始まったばかりだと思っていたのに、気付けば時計の長針はちゃんと50分後の数字を指していた。
どうやら私は授業中ずっとぼんやりしていたらしい。
(どうしよう…全然聞いてなかった…)
焦って回りを見ると授業から解放されたクラスメートたちが晴ればれとした表情で教室から出ていくところで。
私も遅れないように一応広げてあった教科書やノートをまとめ始めた。
『あ。千鶴ちゃんは昼休みに僕のところに来るように』
『え…どうして?』
『どうして、って君が僕の教科の担当だからじゃない。配ってもらいたいプリントがあるんだよ』
『……あ。そう…ですね。そうでした…』
ちょっと飽きれ顔で化学の教科書をトントンと指差す。そんな顔も格好いい…。
『なに?もしかして忘れてた?』
『いえ…、えと……昼休みでいいんですよね?』
『うん。それまでには準備しておくから』
お昼ご飯食べたあとでいいよ、といつもの笑みを浮かべると、ヒラヒラと手を振って教室から出ていってしまった。
私はしばらくその白い後ろ姿を見ていた。
。