想いの行方(仮)

□甘い言葉にご注意を!
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わからないことだらけで行き詰まった私は、それでも無意識に手だけは動かしていたようで。


「…やっぱり嫌いだった?」


沖田さんの声で初めて気がついた。


「え?……あれ?」


手が勝手に汁粉をかき混ぜていた。


「女の子は甘いものが好きだって言ってたくせに……嘘つき」

「嘘つき?」


最後の言葉に首を傾げると。顔を背けた沖田さんが内緒、と呟いた。


…意味がわからない。


この間の『稽古』で一方的に決められた、『沖田さんの言うことを一つ聞く』の内容が、どうしてここに一緒に来ることになるのかと同じくらい、意味が分からない。

まあ、意味が分かったところで私に拒否権はないので、知っても知らなくても、理解できてもできなくても同じことだ。

それに食べ物に罪も恨みもない。

だったら久しぶりに訪れたこの機会を、ありがたく受け入れろことにしよう。

汁粉を一口、口に運ぶ。

小豆のほどよい風味と甘み、そしてこの季節にはありがたい温かさが身も心も暖めてくれる。

沖田さんじゃないけど、自然と顔がほころぶ。

甘いものが好きと言う沖田さんに、素直に賛同できた。
それから、ここに連れてきてくれたことへの感謝も、ちょっとだけ。

巡察に同行する以外はほとんど外出しないから、ちょっとした用事で連れ出してもらえるのは気分転換になる。
それに、いつ巡察で回る道と違う場所を訪れることができるから、父様探しにもなるし。

どっちが『ついで』なんだかわからないけど、それでも。

それに、気を使ってもらって申し訳ないな、と思うのと同時に、皆さんの輪の端にでも、私の居場所があるみたいで、嬉しい。


(もっともっと、皆さんのお役にたてるように頑張らなくちゃ)


緩みきった頬に喝を入れながら、でもこの瞬間だけは…。


ただの女の子に戻ることを許してほしい…。


ちょっとだけ、そう思った。







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