想いの行方(仮)
□兆し
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ばらばらに散逸していた疑問が答えと繋がり、ああ、やっぱりそうなんだ、と驚くほど腑に落ちた。
ずっともやもやしていたことの片が付いてすっきりしたはずなのに、なおも楽しそうに話し続ける内容はなぜか頭に入ってこない。
どこか遠くから聞こえるのは、いつの間にか俯いていたからだろう。
だから、原田さんが二人を無理矢理つれて行ってしまったことに、この時の私は知らなかった。
頭が真っ白になってしまっていた私には、何も見えていなかった。
「……お水、持って行かなくちゃ…」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。
それから、部屋に戻って繕いものの続きを。
帰ってくる前に、終わらせなきゃ。
それを渡して、明日に備えて早めに休もう。
そう、やらなくてはいけないことが、まだある。
勝手場に向かう足取りが、いつもより頼りない。
地に足がついてない、という状態は、今みたいなことを指すのだろうか。
なんだか変な感じだ。
足を動かさなきゃと思っているのに、ちゃんと動いてくれない。
先に進まなきゃと思っているのに、全然進んでくれない。
お世辞にも広いと言えない屯所なのに。
目的地までがひどく遠く感じる。
時間も、距離も。
無意識でも、足が勝手場までの道のりを記憶していてくれたことが幸いだった。
そうでなければ、そこには着けなかったかもしれない。
『やっぱり…』
と、思ったのと同じ回数
『でも、どうして…』
と、疑問が何度も浮かんだ。
それだけでいっぱいだった。
こんなことばかり考えてしまうことこそ『どうして』だけれど、それすらも浮かばなかった。
分からなくなった私は、随分と長い間、勝手場に立ち尽くしていた。
20130320