想いの行方(仮)
□傷
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ぱしんと音をたてた障子が、私ひとりだけの空間を作り出す。
その瞬間、堪えていたものが勢いよく零れ落ちた。
「…ふ…、ぅ…っ」
それは拭っても拭っても止まらなくて、手のひらを濡らしていく。
その手で拭っているものだから、顔がどんどん酷い状態になっていく。
二歩、三歩と、部屋の中へ歩いたところで、身体が支えを失ってへたり込んだ。
喉が詰まるほどの嗚咽も、胸の苦しみを大きくするだけで、全然止まらない。
『結局』なのか、『やはり』なのか。
彼は来なかった。
以前も、何度も逃げ込んだあの部屋にだけは、一度も。
それを知っての行動だったはずなのに、虚しさが残るのはなぜだろう。
彼が伝えてきたものは、その程度、ということ。
「……違うか」
程度もなにも、最初から本気じゃないのだから、来るはずないんだ。絶対に。
そんなふうに想われるような、特別な何かがあったわけでもないのに、急にあんなことを言い出すなんておかしい、と早くに気付けなかった私が悪かったんだ。
20130403