無双部屋(short)

□雨
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雨音を聞いていると、あの日の夏口が脳裏に蘇って来る…。

暗い空と、冷たい雨と、流れ出る血の赤と…

あの日自らが発した叫び声は、まるで今ここで、もう1人の自分が叫び泣いているのではと錯覚させるほどに…頭の中を響き渡って―



それは父を失ったあの日から…甘寧の隣で目覚める様になった今もずっと、変わる事は無い。


変わったのは、涙を流さなくなった事くらいか…

甘寧の為とか、そんなんじゃ無い。
ただ時が過ぎ去っただけ…
痛みは、悲しみは徐々に薄れ、アイツを大事だと想うごとに、俺は呪縛にも似たあの苦しみからやっと解放されたって言うのに…。

目覚めたその耳に聞こえてくる静かな雨音に…耳を塞ぎたくなる。

ただ思い出すだけならいいのに…なぜそこに、いつまでも胸を裂く様な痛みが伴うのだろうか…。


雨音が…俺に痛みを呼び戻す。


今、隣で眠る『アイツ』はお前の『仇』なのだ…と。





目も耳も塞ぎ、外から侵入して来るすべての情報を遮断する。

そうすると、隣に眠る甘寧の体温と息遣いだけが俺の体に伝わって来る。


その温もりだけを感じて…後は何も感じなくてすむように…。
体を丸め、自分を守る…


いつまで… 俺は…




どうして………








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