無双部屋(long)

□伝えない 言葉 4
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「甘寧さん、一人でここまで来たの?随分暴れてくれたみたいだけど、囲まれてるの、分かってる?」
「ああ…だがテメェさえ切りゃ、後は凌統抱えて逃げれば良いだけの話しだ。」
「あ、そう。じゃあ…殺り合おうか…。」

ギリギリと刃のぶつかり合う音が響く…
両者互角…あまりの速さに集まってきた山賊達も手が出せない。

(また…離されちまったなぁ…)

苦笑いを浮かべながら、手の拘束を解くべく手首を必死に動かす。
俺には手を出さない様に言われてるのか、山賊達は俺の事を気にしつつも襲っては来ない。
まったく、好都合ってね。

だが、思いのほかギッチリ結ばれたそれは一向に外れない。

クソっ、これ以上負担になりたく無いのに…

手首が擦れて血が滲み出した頃、遠くから微かな音が聞こえた。
それは次第に大きな物音となり、こちらに押し寄せて来る。



「凌統殿!遅くなり申し訳ありません!!」

甘寧とは違い、軽やかに部屋に入った陸遜は、やはり俺の姿を見てその綺麗な顔を歪ませた。

「大丈夫ですか?」
「ん。大丈夫。」

陸遜隊と山賊達の交戦が開始される中、陸遜は真っ先に俺の手足の拘束を外してくれる。
体が自由になると、俺の手を縛っていた布で、辛うじて腰に引っかかっている服を縛って立ち上がった。
凌将軍として…まだ戦う為に…。
武器は無くとも、体術にだって自信はある。


「陸遜、俺の力が足りなかったばかりに…すまな」
「凌統殿が無事ならそれでいいんです!」

真っ直ぐ見つめられ、告げられる。

あぁもう…謝らせてもくれないのかい。

「甘寧殿!ここは私が引き受けます!あなたは凌統殿を!!」
「あぁっ!こいつは俺が殺らなきゃ気がすまねぇ!!」
「凌統殿よりソイツの方が大事なのですか?」
「んなわきゃねぇだろ!!」
「なら、文句はありませんね。」
「…」

「って何勝手に話し進めてるんだい?俺も戦うっつーの!」

言うと同時に近くにいた山賊に踵落としを決める。
それを合図に、今まで俺を襲わずにいた山賊達も、俺への攻撃を開始した。

「チッ…」

舌打ちしながら、甘寧は奴と距離を取る。
刃は向けたまま…
そして、陸遜が刃を奴に向けた途端、甘寧は俺に向かって走って来た。
そしてそのまま、俺の体を抱え上げる。
あまりに咄嗟で抵抗も出来ない。
「陸遜!そいつ逃がすんじゃねぇぞ!」
「ええ。私も親友傷付けられて、ハラワタ煮えくり返ってますから。」

陸遜のらしくない言葉に少し、泣きたくなった。
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