無双部屋(short)

□背中合わせ・続
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「凌将軍、傷は大分ふさがりました。無理しない程度になら執務戻って構いませんよ。」
「本当かい?良かった。」

俺が傷を負ったあの戦から二週間が過ぎた。
あんまり寝てばっかりいるのも症に合わないし、陸遜にずっと執務押し付けてるのもそろそろ申し訳無いと思ってたから、医者の言葉は素直に嬉しい。

…ずっと一人で寝てると、いらない事まで考えちまうし、な。

「私邸へ戻っても構いませんが、毎朝医務室には通って下さいね。」
「分かったよ。世話になったね。」

二週間籠もりっきりだった医務室を出ると、外の空気を思い切り吸い込む。
ちょっとした開放感。
やっぱ薬品の臭いは好きになれないっつの。

「凌統殿!」

少し離れた場所から呼ばれて振り向くと、山のように書簡を抱えた陸遜が小走りに近付いてきた。
丁度良かった、報告に行く手間が省けたってね。

「陸遜。相変わらずすごい量の仕事こなしてますねえ。」
「いえ、そんな事ありませんよ。腕の方はどうですか?」
「ああ、大分いいってさ。今日晴れて退院。軍師殿には心配かけましたね。」
「それは良かったです。執務には戻れそうですか?」
「無理って言いたい所だけどね。そうそうアンタに仕事押し付けてられないって。」

過労死させたら大事だ。
いや、本気で。

「その事なんですが…アナタの仕事を代わっているの、甘寧殿なんです。」
「は?」

聞き間違いか…はたまたやけにリアルな夢か…。
いや、普通信じられ無いだろ。
あの執務嫌いのアイツが!?

「私も自分で引き受けるつもりでいたのですが、甘寧殿がどうしても、と。そしてその事は凌統殿には言わないでくれと。」
「…何で?」
「言えばアナタが無理すると思ったんじゃないですか?真面目に取り組んでましたよ。甘寧殿。」
「…本気?」
「本気です。」
「…。」

あの戦以来、甘寧には会っていない。
傷の影響で高熱が続き、熱が引いた後もずっと医務室でほとんど面会謝絶の状態だったから当たり前なのだが…
あんな弱味見せちまった後になんて、会いにくいっての。
しかも執務代わって貰ったなんて、余計に…。
仕方無い…取り敢えず、孫権様の所報告行って、それからアイツの好きそうな酒でも買って来るか。

「陸遜、明日からまた執務戻るからよろしくな。」
「はい。でもあまり無理はしないで下さいね。」
「分かってるっつーの!」

素直に礼なんて、言えないだろうけど…。
アイツに会いに…。



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