Another小説

□相合い傘
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「……最悪だ」


ザーッと降り止まない雨を見て才蔵は呟く


「……雨降るとか聞いてないぜ」


どうなってやがる……お天気予報のお姉さんお兄さん


「こうなったら走って帰るしかないか…」


一向に降り止まない雨を玄関口で睨みつけてカバンを傘代わりにして帰ろうしたとき


「…才蔵?」

「…佐助?何してんだよ」


後ろから佐助が声をかけてきた。その手には緑色の傘が握られていた


「我 部活のミーティング 終わった 今帰るところ」

「そっか……陸上部だもんな」


雨降ってちゃあできねーよな…と納得した才蔵の隣に立つ佐助


「才蔵 傘は?」

「あ〜…忘れてきちまってよ。だから濡れる覚悟で走って帰ろうかと」

「それダメ!風邪ひく!」


ぼっと緑色の傘を開け才蔵と自分を入るようにさす


「才蔵 傘入る 一緒に帰ろう」

「え!悪いって!そんな…」

「帰る道同じ だから無問題」


全然引かない佐助を見て才蔵は暫し考えこみ


「じゃあ、よろしく頼む」

「諾!」


こうして二人は一つ傘下帰るのだった


「才蔵は一人暮らし?」

「いや。中学卒業までアナともう一人の幼なじみの三人で孤児院いたんだ…」

「…そう」

「んで一人暮らしするって言ったら二人に猛反対くらってよ!今はアナとルームシェアしてる」

「…反対?」

「ん〜。そこいらへん俺もよくわかんねーんだよな……二人曰く女の一人暮らしは危ないだ〜とかストーカーに襲われるとか、なんとか……俺みたいなヤツ襲うなんて物好きいねーよな!」

「……才蔵 鈍い わかってない」

「………?」


才蔵は美人と呼ばれる分類に入る、が、しかし本人は全然自分の魅力に気づいていない


「……佐助ってさ」

「…ん?」

「意外に紳士、だよな!」

「…は?」


才蔵はふふふ、と笑って佐助の肩を指さす


「肩濡れてる、それに何気に道路側に歩いてくれてるし、さぁ!」

「……女の子護る 男として当たり前」

「ははっ!!嬉しいこと言ってくれるじゃねーか!……けどそれじゃあ佐助が濡れるな」


と言い、才蔵は傘を握っている佐助の手に自分の手を重ね二人が濡れないように肩を寄せ合う



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