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□出張編
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キンケドゥは机に肘をつき、口元で手を組んで眉間にシワを寄せていた。
心配したリィズがコーヒーを運びながら声を掛けるが、真剣に何かを考えているらしいキンケドゥは生返事を返すだけだった。
そこへ風呂から上がったシーブックがリビングの扉を開けた。
「あ、キンケドゥ。帰ってたんだね、お帰り…って、どうしたの?なんか重たい顔してるけど」
しかしキンケドゥが答えないので、シーブックはリィズの顔を見ると、
「帰ってきてからずっとこの顔なのよ」
妹もよくわからないといった様子で肩を竦めていた。
シーブックは首をかしげてからキンケドゥの傍らまで行き、名前を呼んだ。
「キンケドゥ?」
「………」
しばらくして、キンケドゥの目がスッと細くなり、
「シーブック…」
低い声で弟の名を呼んだ。
なに?という目で見ていると、
「…どうしよう……」
と心痛な面持ちで話し始めた。
「…お兄ちゃん、出張が決まってしまったよ…」
「……は?」
シーブックとリィズは仲良くハモり返事をしながら、表情の曇った長兄を見る。
「…週末から来週の末まで、お兄ちゃんはコロニーの端っこに行かなきゃいけないよ…」
わなわなと組んだ手を震わせるキンケドゥを、先が見えたリィズの冷めた視線が射抜く。
「大変そうね…」
シーブックも何かを察したようで、それってつまり…
「一週間もシーブックを抱けないなんて!お兄ちゃん死んじゃう!!」
「お兄ちゃん、もう少しオブラートに包んでちょうだい」
ワッと顔を覆って嘆くキンケドゥお兄ちゃんに、冷ややかな目付きのまま呆れた様子でリィズが注意を入れる。
しかしキンケドゥは構わず、
「毎日ちゅうしたいのに…毎日ぎゅってしたいのに…」
と続けて肩を震わせた。
リィズは「電話があるじゃない」と言って、ため息をつく。
「ヤダーさわりたいーさわりたいーっ」
駄々をこねる28歳。
リィズがまた呆れたため息を漏らす横で、シーブックは静かに考えていた。
キンケドゥが数日家をあけるということは、数日キンケドゥに触れられないということ。
シーブック的には、兄から与えられるものをただ受け入れているだけだった。
触れてこなければこないで、そのまま過ごすだけだ。
そう思っていたので、最初はわからなかった。キンケドゥがそんなに嫌がる意味が。毎日、中に注がれる兄の熱が、急に途絶えることの意味が。


呆れるリィズに見送られながらふらふらと風呂場へ行き、出たあとは当たり前のようにシーブックの部屋に行くキンケドゥ。
腰までベッドに入れてうつ伏せに寝転んでいるシーブックの傍に座り、
「ぁー出張行きたくねぇ〜」
と弟の上に寝そべった。
「重いよキンケドゥ」
「行きたくなーい行きたくなーい」
弟の批難をスルーして、頭を揺らしてシーブックの背中をゴロゴロする。
シーブックは「んもー」と読んでいた雑誌を閉じて寝返りを打った。
すると背から落ちたキンケドゥの頭が布団に沈む。
「やーんシーブックがお兄ちゃんに冷たーい」
キンケドゥはあまり情の込もっていない声音で言った。お疲れ半分のようだ。
なら、とっと自分の部屋行って寝ればいいのに…
シーブックはため息をついて体を起こし、布団に沈む青髪をそっと撫でた。
自分よりも少し深みのある海のような青…キレイだな、といつも思う。
キンケドゥは心地よさそうに目を閉じている。今にも喉がゴロゴロ鳴りそうだ。
よほど安らいだのか、静かな寝息が聞こえ始める。
「キンケドゥ、風邪引くよ」
布団も掛けず、しかも風呂上がりなのに、こんなところで寝転んでいたら体を冷やしてしまう。
シーブックは兄の肩を揺すって意識を呼び戻した。
「ム…」
すぐに目を覚ましたキンケドゥは、瞼を擦りながら上半身を起こし、大きなあくびをひとつ。
少しボーっとどこかを見つめてから、
「…戻んのめんどくせぇ……ココで寝る」
言うや否や、布団をめくって弟のベッドに入り込む。
「えっ、ちょっと…」
僕はどうするのさ、と口に出す前に、こっちに体を向けたキンケドゥが敷き布団をパフパフと叩き、
「一緒に寝よ、シーブック」
語尾にハートマークでも付きそうな甘い口調でシーブックを誘ってくる。
シーブックはもう一度ため息をついてから、部屋の電気を消して布団に入った。


そしてなんやかんやと日は過ぎていき、出張前夜。
「いよいよ明日だよーー」
ウワァァァと両手で顔を覆いながら嘆き、リビングのソファーに座ってイヤイヤする28歳。
夕飯を済ませ、シーブックはリィズが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、兄妹揃ってため息をついた。
「キンケドゥお兄ちゃん…一週間なんてあっという間よ」
「そうだよ、毎日電話するからさ」
長男を次男と長女で挟み、右から励まし左から励ます。
キンケドゥはしばらく両サイドからよしよしと頭を撫でられていたが、不意に顔を上げると、
「可愛い弟と可愛い妹を置いて、両親のいない家を一週間もあけるなんて…心配でたまらん!」
と握り拳を見せた。
そんな兄を見て、リィズは呆れて肩を落とす。
「そんなコト言って、本音はシーブックお兄ちゃんと一週間イチャイチャ出来ないのがヤなんでしょ。あと、お父ちゃんとお母ちゃんをまるで死んだように言わないで」
「それもあるよ!?それもあるけど!」
弟はもちろん、妹と家のことが心配なのも本音だ。
リィズには過言に取られたが、仕事云々でほとんど帰ってこない両親は実質いないに等しい。
シーブックが生まれて間もない頃から、両親に代わって二人の面倒を見てきたのだ。
そりゃ主に資金的な大人の事情は、さすがに親のスネをかじらざるを得なかったが。
それはさておいて、10年以上も自分が世話を焼いてきたのだ。
それに、シーブックはもう高校生だが、リィズはしっかりしているとはいえまだ小学生だ。
たかが一週間といえど、放置するのは非常〜〜に心配である。
心配ではある、が。
ただ、それ以上に弟としばらくイチャつけないのが、やはり一番のネックだった。
「ぅぅぅ…シーブック〜」
隣にいる弟に抱きついて、情けない声を上げる28歳。
シーブックは「はいはい」と兄の頭と背を撫でた。
「…ヌゥゥゥ……こうしている時間も惜しいな。シーブック、ちゅーしよう」
顔を上げて言うなり、キンケドゥはシーブックの肩を掴んで真剣な眼差しを向けた。
「え、いま?」
「ちょっと、そーゆーコトは部屋に行ってからにしてよっ」
妹の前でそんな…と慌てるシーブック。
リィズは、年頃の妹の前でナンテコト!と目尻を上げて長男に抗議した。
「うっし!」
「うわぁ!?」
妹に怒られたので、キンケドゥはシーブックを抱き上げる。
驚く弟を肩に担ぎ、足早にリビングを退散した。
「明日出張なんだから、ほどほどにしてよー」
背にかかるリィズの注意に「いぇっさー!」と返事をして、キンケドゥは自室に弟をお持ち帰りした。
「風呂は?」
「後だ、あと!」
ベッドの上にシーブックを降ろし、見上げてくる愛らしい瞳と目を合わせる。
その唇をなぞり、
「あ〜…出張ヤだなーヤだなー」
と口を尖らせるキンケドゥ。
子供のように嫌がる兄に、シーブックは思わずクスリと笑みがこぼれる。
「仕事終わったら電話してよ、夜待ってるからさ」
シーブックは唇をなぞる手を取ってやわらかく微笑み、キンケドゥに顔を寄せてそっと口付けた。
「…っ」
キンケドゥは面食らったように目を丸くしたが、シーブックが「ね?」と小首を傾げたのを見て、嬉しそうにくしゃりと顔を歪めた。
愛しい弟の頬を優しく撫でて、
「まったく…いつの間にこんな誘い方をするようになって……どこで覚えてきたんだ?」
ちょっぴりいじわるな笑みを浮かべる。
「さ、誘ったわけじゃ…」
いや半分は誘ったけど。でも、なんだか急に恥ずかしくなってきて、赤面したシーブックは語尾を濁しながら顔を背けた。
「えー、今のは誘っただろ〜、だってお兄ちゃん、こんなにドキドキしてるよ?」
シーブックが引っ込めようとした手を捕まえて、自分の胸元に当てる。
「な?」
「んー…わかんない…」
「えぇぇ…」
お兄ちゃんちょっとショック。
しかし、
「僕もドキドキしてるから、かな…?」
そう言って遠慮がちに上目遣いで見上げられて、ショックなんてものはどこかへいってしまう。
俺の弟マジ天使!!
「じゃあ…」
と腕を引いて、シーブックの頭を胸に抱く。
「ぅわっ、と…」
「これならわかるかな?」
「なんとなく…」
シーブックは大好きな兄の力強い腕に抱かれ、安心感に目を閉じた。
自分の鼓動なのか兄の鼓動なのか、平常よりも速打ちの音がトクトクと聴こえる。
しばらく耳を澄ませていると、頭を撫でていた手が髪をすくようにして首元まで下ってきた。
うなじを撫でられて、シーブックはくすぐったさに「ひゃっ」と驚く。
後頭部を撫でつつ、うなじをくすぐられる。
「ん…キンケドゥ、くすぐったいよ」
「じゃあこっち向いて?」
「んっ…」
呼ばれて上を向くと、キスが降ってきた。
促されずとも自分で口を開き、キンケドゥの熱い舌を迎え入れる。
「ふ…ぁ…んっ…んん…っ」
いつものように舌が絡みつく。同時に、うなじをまた撫でられる。
キスが深いせいか、くすぐったさに甘みがあるような気がする。
「んんッ…は…ぁ、ん…っ」
もう片方の手が服の上から胸元をまさぐり、尖ってきた先端を中心に撫で始めた。
次第に指で押したり、カリカリと掻くような愛撫になり、体がピクピクと反応する。
「乳首硬くなってきたね」
「ふあ、ぁ…んっ…」
「こっちは?」
胸から離れた手が下腹部に伸びる。
「あっ…!」
少し膨らみのあるそこを服の上から優しく撫でられ、ゆっくりと揉まれる。
「あん…っあ、や…っ」
「ん、こっちも硬くなってきた」
手が上下に動き、シーブックは淡い刺激にたまらずキンケドゥの服を握り締めた。
「服、脱ごうか」
「んっ…」
シーブックはうなずき、上着のボタンを外し始める。
同時にキンケドゥはシーブックのズボンを降ろし、下着をするりと剥いだ。
反りたつものがぷるんと顔を出す。
全裸になったところで、そっとベッドに押し倒された。
恥ずかしさに閉じていた膝を開かれ、上から下まで舐めるように凝視される。
「可愛いな、シーブック…この身体に一週間も触れられないなんて…」
つん、と指先が胸の突起に触れ、身体をなぞりながら下降していく。
ぞくぞくするような甘い刺激に身体が震える。
中心にたどり着き、先端までなぞり上げたあと、キンケドゥの大きな手にやんわりと包まれて、ゆっくりと上下に扱かれた。
「あっ、ぁ…ッ…ん、あっ」
快感がじわじわと全身を支配していく感じがした。
「シーブックの味もよく覚えていかないとな」
「ひゃ…ぁああ!」
扱かれてさらに硬くなったそこを、キンケドゥの口に含まれる。
温かい口内で舌に遊ばれて吸われて、さらに根元は手で扱かれ、シーブックは嬌声を上げて悶えた。
「ほらシーブック、お兄ちゃんに出して」
「やッ!ぁ、あああっ!」
先端を強く吸い上げられ、シーブックは身体を大きく震わせながら白濁液を兄の口内に吐き出した。
キンケドゥが喉を鳴らしながらコクリコクリとそれを飲む。
「ん、シーブックの味だ」
ペロリと出した舌で唇を舐めるキンケドゥの容姿がなんだか艶やかで、シーブックはドキリと胸が高鳴った。
(僕の…全部、飲んじゃった……)
まぁいつものことであるが。
弟のドキドキはいざ知らず、キンケドゥはシーブックの頭の横に座り直し、
「シーブックも、お兄ちゃんのシテくれよ」
とその頭を撫でた。
シーブックは黙ってコロリと寝返りを打ってうつ伏せになってから上体を起こし、兄に向き合って座った。
キンケドゥの指先がシーブックの唇に触れる。
「この可愛いお口でシテ欲しいなぁ」
「ん…」
シーブックは頷いて、すでに硬く勃ち上がっているキンケドゥのそれに手を伸ばし、顔を近付けて先端にそっと舌を這わせた。
風呂前だからか、汗のようなニオイと味がするが、キンケドゥのものだからとシーブックは安心感しか感じない。
パクリと口に含み、手も使ってゆったりと扱く。
「ん…ッ」
気持ち良いらしく、熱い吐息をこぼしながら、キンケドゥはシーブックの頭を撫で撫でする。
「ん…ふ…んっ…」
シーブックは兄の吐息に興奮を覚え、夢中で手を動かした。
先端から先走りが溢れてきたので吸い上げながら舐めとる。
「は…ぁ…シーブックも、お兄ちゃんの味をちゃんと覚えておくんだよ?」
シーブックは頷き、舌に乗っている兄の味に集中した。
「ん…っふ、ん…んん…っ!」
それから間もなく、口内に兄の熱がたくさん注がれる。
毎度の如く、喉に当たってムセそうになるが、堪えてコクンと喉を通した。
「ん、全部飲めたね、イイ子だ」
キンケドゥが撫でていた頭をポンポンと優しく叩く。
頬を包んで「もういいよ」と言うので、シーブックは顔を上げて上体を起こした。
すると肩を掴まれて、またベッドに押し倒される。
「今度はこっちのおクチでお兄ちゃんの味を覚えてね」
「ぁ…」
開いた足を抱えて肩に乗せ、まだ弄られていないのに欲しそうにヒクつく下のおクチに、キンケドゥの熱く膨張したものが当たる。
「シーブックがいっぱい舐めてくれたから大丈夫だと思うけど」
ズプッと先端が入ってきて、シーブックはビクリとした。
「どう?シーブック。大丈夫?苦しくない?痛くない?」
確かめるように先端を何度か出し入れしながら、キンケドゥが小首を傾げる。
「ぁ…ん、ん…だいじょ、ぶ…っあ!」
「良かった」
キンケドゥはホッと胸を撫で下ろしながら、もう少し深めに入れた。
また何度か抜き差しを繰り返してから、
「じゃ、奥まで入れるよ?いい?」
淡い刺激に小さく震える弟に、わざとらしくお伺いを立てる。
「あ、いぃ、よ…っん、奥に、早く…っ」
欲しくてたまらないシーブックは、潤む瞳で兄を見つめた。
またそうやって俺を煽るような目をして……キンケドゥはぞくりと走る感覚に笑みをこぼす。
ニヤリとしながら腰を引いて、
「力抜いてろよ」
一気に全部押し込む。
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