Your expect language

□Be frozen affection
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 ねえ、教えて。



 愛って、なに?





【Your expect language--Be frozen affection】





「いいのか」
「………」

そう、言葉を投げかけたのはユージーンだった。

―――ボクは、今日、この城から…王の盾から抜ける。
表向きはいわゆる脱走兵として扱われるが、事実追い出されるのはユージーンだけ。



ボクがここから去るのは、将軍とアガーテ様の勧めによる事態だった。

サレに拒否されてから数日。ボクはまた言葉を発することができなくなった。
それだけならまだいいのだが、何も“覚えることができない”のだ。

記憶がないわけじゃない。
記憶力が無くなってしまったような感覚だった。

しかしそれも、誰にも理解できないかもしれない。

今亡き、城の主治医を除いて。



サレはというと、部屋に閉じこもって出てこなくなったらしい。
弁解に訪れないのは、事実だからだろう。



亀裂は、深かった。



「………」

この城に、もう居たくなかった。
だから、早く行こう、と促そうとしたときだった。



「待って。待ってください、マオ」

ふいに背後からした声は、アガーテ様のものだった。
ユージーンや、見送りにきたミリッツァが頭を下げる。

「ユージーン。ちょっとマオとお話しする時間を貰えるかしら」
「マオがよいのなら私は構いません」
「そう。
…マオ、いいかしら」

ボクの視線の高さまで膝を折り、同じ目線で問うてくる、空色の瞳。
早く出ていきたかったが、アガーテ様の言葉を無碍にする理由はない。

行動も意思も露わにしないボクに少し戸惑いながらも、「いいかしら?」と確認の質問をする。

しかしそれにすら応えることのないボクに、ユージーンは「いいのだと思いますよ」と言った。

嫌なら逃げると、わかっているからだろう。

「じゃあ、ユージーンは席を外して。…ミリッツァは、マオのために居て頂戴」
「御意」

そう命じられ、ユージーンはその場を後にする。



「――マオ、悪いわね」
「………」

悪い、とはなんだろうか。別に、アガーテ様は何も悪いことはしていない。
寧ろ、感情を返せないボクが悪いのだと、思う。

理屈的に、だけど。

何もかもわからなくなった頭では、もう理屈的にしかものが判断できない。

ボクが黙りこくっていたら、アガーテ様が口を開けて話を始めた。



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