Your expect language

□a change
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「声が聞きたい…君の声が思い出せない…」
「……」

僕らを見守るミルハウスト。

「ぼうやがいなくなったら…
どんどん忘れていくじゃないか」
「……」
「姿も…顔も…背丈…表情…
君の綺麗な瞳と髪の色」

色褪せていく

どんなに想っていても…

時はとても残酷に

奪い去ってゆく


「…名前だけでいいんだ…朝の挨拶だけでもいい…
声を聞かせて…
傍に居てよ…」

君のいない世界なんて

汚くて

つまらなくて

――寂しい。

置いていかないで…


「…」

ぼうやの表情が少し変わった。僕の服をぎゅ、と握り、口をぱくぱくさせている。

…しかし、声の出し方がわからないようで。

「…ぼうや」

声なら、出させる。
僕はぼうやに口づけた。

「…っ、…っ」

目を白黒させるぼうや。顔はどんどん赤くなっていく。

舌をいれる。

「…っ、んっ…」

声がでた。
もう少し続けてみる。

「…っん、ん…」

“ん”しか声が出てない。
忘れやすくて出しやすい言葉。
しかし、くぐもっているので、ずっとは出していられないだろう。

「んっ…ぁ」

もう少し。

「あ…っぅ」
「…」

す、と離れる。
僕らの口を、透明な糸が繋いだ。
そして切れる。

「…ぅ」
「ん…?」

ふてくされた表情で、でもどこか恥ずかしそうに、ぼうやが呟いた。
しかし、聞き取れない。

「サ………レ、…………ばか。」
「…バカ…ねぇ」

くす、と微笑む。するとぼうやは強く抱きついてきた。

「声…聞けたね」
「……」

ぎゅ、と抱きついたまま、返事をしないぼうや。
それでも…僕は嬉しかった。

「将軍、ぼうやを連れてきてくれてありがとうございます」
「いや。
…良かったな」
「…えぇ」

まだたどたどしく

あまり喋らないけれど

君の声は戻ってきた。

ちょっとずつ、ちょっとずつ…

取り戻していこう
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