Your expect language

□nursing a way
2ページ/3ページ



咳が強くなる


病原菌を外に出そうとしているのだろうが、ぼうやは苦しそうで…


僕は背中をさすってやるしかできない。


そんな中、ぼうやが僕を離そうと押す。


大方、風邪を移したくないとでも思っているのだろう



僕は離れない。



やがて、咳し疲れたぼうやが力なく僕に寄りかかってきた。


気持ち悪そうにしている。


また吐くかな、と思いながら、ベッドに寝かせる。


横にたらいをスタンバイ。



「サ、レ………、ぅ」


気持ち悪いのに僕を呼ぶぼうや


最後のあたり濁ったね…


「なんだい?」


熱で潤んだ瞳で僕を見るぼうや


「…ごめん…ネ」



…謝るばっかり。


まあ僕が原因なんだけどね


「違うでしょ?」
「……?」
「君は違うこと言ってたはずだよ
思い出してごらん?」


僕の言葉に、


フル回転しない頭で記憶を探り出すぼうや


「荷物持つの手伝ったときとか」
「………記憶…に無…、ヨ」

忘れたのかな…まあ忘れるよね


「月1の行事とか」
「………ぅ…?」


忘れたのかな…


「廊下で豪快にずっこけた時とか」


あれは後々にもひこずってたから

覚てるはず…


「………?」


しかしぼうやの反応は変わらず。


…さすがに少し違和感を感じて、ぼうやに訊ねた。


「…ぼうや、記憶…あるよね?」
「……………」


ちょっと


そこは黙るとこじゃないよ



「…ぼうや?」
「…一部だけ…無いの」
「一部?」
「…………」



それは


どのあたりを…なんて


聞けない。



なんとなくわかったから。



「…そう。ごめんね気付かなくて」
「うぅん」



ふるふると頭を横に振るぼうや


「いい…
ね、ボクな………て言った…の?」



そっちの方が気になったらしい


…強いね、ぼうやは。


「…『ありがとう』って言ってたよ」
「……」


心配かけてごめんなさい、より


心配してくれてありがとう、と


言ってたんだよ?



僕には理解できなかったけどね。



「…ごめんネ」



ぼうやは僕を見据えたまま、言った



「ボク…嬉し…、ヨ…」



“ありがとう”とは違う言葉



でも



意味合いは似てるんだね。



fin.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ