Your expect language
□don't hurry
2ページ/3ページ
ミリッツァの言うがままに、その場で息を潜める。
それを確認したミリッツァは、ボクから死角となった扉へと歩いていく。
「……何用だ、トーマ」
「ふん、随分と偉そうな口振りだな。
…まあいい、最近王の盾に働いていない奴がいるそうだが」
トーマの言葉に、ボクは目を見張った。
働いてない者。
まさしくボクのことだった。
「それが何だ?」
「そいつがサレとお前のところへよく出入りしていると聞いてな。
…邪魔な奴は消すに限る」
「そんなもの、お前に決められることではない。
用はそれだけか」
「それだけだ」
なら帰れ、とトーマを追い返す。どこか不快になる声で不機嫌そうにし、おとなしく帰っていった。
ミリッツァはそれを確認し、1分程待ってからボクのもとへ帰ってきた。
「マオ」
膝を抱えてうなだれるボクに、ミリッツァは視線を合わせてくれる。
ボクもミリッツァを見上げた。
「…トーマの言った事、気になるか?」
「…うん…」
「そうか…」
否定のできない事実。しかしボクはこんな状態では働きようがない。ユージーンも、毎日色々大変だというのに。
早く、
早く戻りたい。
「マオ」
ふいにミリッツァがボクを抱きしめた。
ボクは目をぱちぱちさせながらミリッツァの腕の中に収まって。
「焦るな」
早く、
早く…
その言葉を打ち消すように。
「お前のいる場所に近道はない…ゆっくりでいいんだ」
「ミリッツァ…」
ゆっくり、
ゆっくり…
「でも遅すぎても…」
「…足の遅いものが足の速い者についていけるか?」
「…?」
「足の速い者は、遅い者に合わせるのが普通だ」
お前は遅いんだから、私達が合わせるんだ、とミリッツァ。
ゆっくり…
ゆっくり。
「ぅん…」
焦ったらかえって遠回りになるかもしれないんだと
ゆっくり、自分のペースでなおしていいんだと、
言われてる気がした。
「さ、何かをしにきたんだろう?何をする?」
「んと、ね…」
足が絡まないように
自分の道を自分のペースで
それが一番の
短距離かもしれない。
惑わされないで
ボクの心。
.