短編2

□トリックオアトリート!
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「それでは皆さん改めて、トリックオアトリ…」
「俺はトリックを選ぶ!!悪戯してくれ飛亜咲!!」
「ちゅーか黙れ変態」


……おお、珍しく浜野が突っ込んだ。

笑顔でラリアットかますとか容赦ない。

霧野がさすがに可哀想だろうが。


「じゃあ浜野先輩…トリックオア…」
「その前に!俺から飛亜咲にトリックオアトリート!」


…図ってやがる浜野のやつ。

いくら飛亜咲でも菓子を貰う前に言われたら返すものなんてないはず…


「トリートです。キャンディどうぞ」
「えっ…え!?なんで!?なんで持ってんの!?」


……持っていた。

さすがだ、自分の周囲にいるやつの人柄をよく分かっているらしい。


「水鳥さんが、『防衛用に』って…」
「ううー…瀬戸かぁー…」


訂正、こいつには危機感というものが全くないらしい。今回ばかりは瀬戸に感謝だな。


「それでは改めて…トリックオアトリート、浜野先輩。ちなみに先輩が期間限定の苺味チョコレートを所持しているのは調査済みです」
「事前に!?」


ぬかりねえな!!

どんだけ菓子欲しいんだよ!!


「ちぇー、はいよ、最後の一個」
「ありがとうございます。…速水先輩、トリックオアトリート。ポッキー持ってますよね」


…どこで仕入れてるんだその情報。
いつ調べたんだよそんな時間なかったはずだろ…!


「ど、どうして知ってるんですか…っ」
「遠目に鞄の中が見えました…」
「目ぇ良すぎだろ!!」


遠目に鞄の中まで見えるような視力があんのかよこいつは!!つーか一歩間違えばそれ犯罪だっつの!!


「う…確かにありますけど…」


何やらいつもより輝いた瞳の飛亜咲に負けた速水は、渋々鞄の中からポッキーを取り出した。しかも期間限定のやつ。


「ありがとうございます。美味しく頂きます。じゃあ神童キャプテン、トリックオアトリート」
「お、俺か…?えっと…」


少し焦りながらポケットに手を入れる神童。爛々とした目でそれを見つめる飛亜咲。

ポケットにはなかったらしく、神童は次に自身の鞄を漁り始めた。

すると出てきたのは期間限定たけ○この里。


期間限定好きだなこの学年。


「あ…これでいいか?」
「はい、ありがとうございます。それでは最後に倉間先輩、トリックオアトリート。でも先輩はいつもお菓子なんて…」
「ほらよ」
「……え?」


ふん、今日の昼に浜野から貰ったチョコレートが残ってんだよ残念だったな。

つか何だよお前俺にだけトリック選ばせる気だったのかよ。

悪戯仕掛けに失敗した飛亜咲は、しゅんと俯いて頬を膨らます。


「…ずるい…」
「ずるくねーよ」
「…ずるい。無効なの。人から貰ったものだなんて駄目」
「いいだろ別に。貰ってたってもう俺のものなんだから、どうしようと俺の勝手じゃねえか」


なんでこんなに往生際が悪いんだよ。

負けたのがそんなに悔しいのか。


「…うう…」
「…何だよ」
「……31日に、リベンジ…!お菓子用意しないでくださいね、倉間先輩…!」
「なんでだよ!!日にち予告しといて用意すんなっておかし…おい飛亜咲!待て!話くらい聞けッ!!」


なんだあの捨て台詞…じゃないなんなんだあいつ。

同じ種類のチョコが2つあんのが気にいらなかったのか…いや何気にチョコばっかりなのが嫌だったのか?


…あいつは相変わらず意味が分からない。


…とりあえず、31日は大量の菓子を用意しておいた方が身のためらしい。


俺は今日何度目かも分からないため息を、おもいっきり吐いた。













「路唯!どうだった?」
「……先輩、お菓子、持ってた…」
「は!?マジ!?いつも持ってねーのに!」
「…浜野先輩から貰ったらしいの」
「うわっ…で、どうしたんだよ」
「うん、31日に…リベンジだよ…!」
「おっ、頑張れよ!あいつの菓子は全部アタシが取り上げといてやるからな!」


トリックオアトリック!
(今度は、悪戯しか選ばせませんから)



 
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