その他夢小説 短編

□正直なトコロ
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最初に言っておこう。私の幼馴染みは、誰もが恐れる借金取り立て屋と、誰もが憧れる超有名俳優である。

「おい路唯、お前のメールアドレス教えてくれ。携帯が壊れた」

「また!?ってか、幽に聞いてよ!」

黙ってれば、というか、何かしらの行動を起こさなければ美青年の枠に分類されるであろう平和島兄弟の兄・静雄。彼と会って話をするのは、携帯が壊れたときか、もしくは偶然街中で出会したとき。

まあ、私の家は新宿だから、出会すなんて偶然はあんまり起こらないんだけど。

だから確実に会えるのは、携帯が壊れたときのみ。必ずこうして、直接私に会いに来る。
弟にでも聞けばいいのに。というか、メモくらいしておいたらどうだ。携帯壊れたの、何回目だよ。ちょっとくらい学習しようよ。確かに昔っから単純バカだったけどさ。

「仕方ねえだろ?壊れちまったもんは壊れちまったんだからよ。それに、最近は幽と会うことなんて滅多にねえし」

もう一人の幼馴染みは、人気俳優であり、彼の…静雄の弟である年下の鉄仮面美青年・幽。
彼とは全くと言っていいほどに会う機会がないが、時々メールで近状報告などのやりとりをすることもあって、わりと話をすることは静雄よりも多かったりする。
仕事が入っていない日には、高確率で電話をしてきたり、直接家にやってきたり。掴み所が少ない子だ。
ちなみにこの間彼が家に来たときの土産物は、何故かハーゲンダッツ(六個入り)×20。ありがた迷惑である。天然なのか意図的になのか。おかげでうちの冷凍庫はハーゲンダッツだらけだコノヤロー。

「…ほら、携帯貸して」
「おう」

素直に携帯を差し出してくる静雄。…いつからだったのだろう。
彼が池袋最強とまで言われるほどに強くなっていたのは。
人々に恐れられるようになってしまったのは。
手は動かしながら、とりとめもなく、頭に浮かんだそんな疑問について考えてみる。

最初は確か、小学生の頃。キレた静雄が思いっきり机を投げ飛ばそうとしたんだっけ。
あれは驚いたなあなんて感慨に耽っているうちに、メールアドレス登録完了。

「ほい、終わったよ。もう二度と壊さないでよねー?」

私が軽い気持ちでふざけてそう言うと、静雄はふいに、困ったような、複雑そうな顔をした。
…様子がおかしい。いつもなら「無理だ」の一言で返してくるのに。

「…何、どしたの?静雄」

とりあえず、心配をしてみる。静雄に限って調子が悪いとかそんなことありえないとは思うけど。けど、一応確認のため。

「……く、なるじゃねえか」
「え、何?聞こえない。もう一回言って」

「……携帯が壊れなきゃ、お前に会えねえじゃねえか」


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