真っ直ぐに。
□雷門中へ
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「…うわ…おっきい…」
思わずもらした呟きに、隣にいた豪炎寺が苦笑をする気配がした。
ゲームでもアニメでも、何度も見ているはずの雷門中。それでもやっぱり、目の前で見ると、迫力が違う。
大きな稲妻印に、爽やかな校風。
ああ、こんな綺麗な学校が向こうの世界にもあったらいいのに、と少しだけ思った。
「ありがとうございます、豪炎寺さん。わざわざ案内までしていただいて」
「いや、俺も特に用事はなかったからな」
「それでも荷物まで持っていただいて、すごく嬉しかったです」
路唯がそう言うと、照れ隠しなのか、癖なのか、豪炎寺はまた左手を口元に押し当てながら視線をそらす。
…つい、そんな姿を可愛いだなんて思ってしまった。
「…それじゃあ、俺はここで」
「はい。本当にありがとうございました」
ぺこりとお辞儀をして雷門中に入っていく路唯の後ろ姿を見送りながら、少年は妹のいる病院に向かって歩き出した。
「さて、と…」
豪炎寺に雷門中まで案内してもらったのは、場所を知りたいという心からであった。
けれど、あるきっかけもあり、その考えは変わった。
この世界を充実しないと損だ。
今は、そう思っている。
「行きますか」
路唯は、不敵に笑った。
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