イナイレ夢短編

□教えてよ。
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「はぁー…」
「…どうしたんだ、さっきからため息ばかりだな」

机に肘をついて今日何度目かのため息をつく私に、珍しくこっちに帰ってきていた私の最愛の恋人・ヒデが聞いてくる。

ここはオルフェウスの宿舎だけど、今はみんな練習中。私は風邪気味だという理由で休まされた。
…これくらい大丈夫だっつの。
みんな本当に心配性だな。

「んー…なんかさ、私たち、一応付き合ってるわけじゃん?」
「なんだおもむろに。それに、一応とは心外だな」

なんか文句言われたけど、知らん。
一応ったら一応だ。忙しいのは分かるけど、デートの一つもしてくれないし。

「でもさ、なんか違うっていうか…付き合う前と何の変化もないのが悲しいっていうか……」

自分でも何が言いたいのか分からないけど、ただ…何だろう、ちょっと不安だった。

一応彼はイタリア代表サッカーチームのキャプテンなわけだし、結構モテるわけで。

私なんか顔も性格も身体も中の中くらいだし、やっぱりそこは…なんというか、彼女として複雑だったり。

…まったく、こんな恋する乙女の気持ち、どこで知ったのだろう。
自分で自分が分からなくなる。

まあ、つまり私が言いたいのは、ヒデにもうちょっと私を彼女として見てほしいというか、特別扱いしてほしいとか、そういう我が儘。

「…不満か?」
「うー…そうなのかな……」

不満かと聞かれれば、よく分からない。
今の『関係』には満足している。
けれど、何かが足りない気がするのだ。

それが何か分からないから、今こうやってため息ばかりついているのだけど。

「曖昧だな、俺にどうしてほしいんだ?」
「……分かんない」

最終結論はやっぱりそれ。
分からないものは考えたって分からない。
何かが心に溜まっている気がするけれど、その正体はやっぱり分からなかった。

…さっきから、分からないことばかり。
そのうち『恋人』という関係の意味すら分からなくなるんじゃないだろうか。

またため息をついて、私はぐったりと机に突っ伏した。

「…俺は、今の生活に充分満足している」
「……?」

いきなり語りだしたヒデに、私は少しだけ顔をあげて彼の言葉に耳を傾ける。

「お前がそこにいて、笑っている。それだけで幸せだ」

………このやろう。

生粋の日本人のクセに……なんて軽々しく口説き文句を口にするんだ。
なんだ、周囲のイタリア小僧共の影響かこんちくしょー!

…そんなこと言われたら、顔が火照る!言い様のない恥ずかしさが込み上げて…

あああ、ばかばかばか!!

なんだその余裕の笑み!!私をからかってるのか!!

「……キザったらしいよ」
「本音だ」

…皮肉のつもりで言ったのに、真面目に返されてしまった。

恥ずかしい、恥ずかしいけど。
それ以上に…やっぱり嬉しい。

「………ばか」
「…お前はどうなんだ?」
「へ?」

急に話題の転換をされて、間抜けな声が出る。どうって、なにが。

「それだけでは、不満か?」
「…っ」

……うわムカつく、分かってるクセに。
言わせて何の得があるのか知らないが、私だって生粋の日本の大和撫子だ。
どこぞのイタリアボーイに感化されたキャプテンと一緒にしないでほしい。

言わないぞ、絶対に言わない。
死んでも言ってやるもんか。

机に伏せて死んだウサギ並みに動かなくなった私に、彼は苦笑をする。いや、苦笑をした気配がしただけだけど、絶対してる。

「…何も言わない…ということは、不満なんだな?」

――嫌な予感がした。

ぞくりと、背筋に悪寒が走る。

「なら――満足させてやる」

そう言って、ヒデはひょいと私の身体を持ち上げた。肩に担がれた私は、さっと血の気が引いていく音を聞いた。

「ま、待って?私、満足。充分満足。だからその…下ろして?」
「初めてだからな、酷くはしない」

聞く耳持たずの彼氏が憎ったらしい。
だが、今の発言で確信した。

――ヤバい、犯される。

「はっ、離して!!私!!風邪気味だから!!あっ、ちょっと頭痛くなってきたかなーなんて!!」
「はは、俺に移せばいいだろう」
「ちょっ、おい、待て!!話し合おう…ってお前、話を聞けええぇぇ!!!」

私の悲痛な叫びは、オルフェウスのみんなが練習をするグラウンドまで響いたそうな…。



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