真っ直ぐに。
□襲撃
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優勝。
その喜びを胸に、嬉々としながら雷門中へと向かう途中、事件は起こった。
皆が窓から顔を出し、音のした方向へ…雷門中へ、視線を移す。
路唯は一人、俯いていた。
(…もう、戻れないんだ)
ふいに瞼をよぎった、赤髪の少年の、あのあどけない…最後の笑顔。
眩しくて眩しくて、切なかった、あの…優しい笑顔。
そして頭に流れていく記憶。テレビの画面越しに見た、エイリア学園の悲劇。
正義は勝つんだって、主人公は負けないって、信じていても。分かっていても。
不安で、仕方なかった、あの――…
「飛亜咲!」
「っ!!」
「行くぞ、何してるんだ!」
「あっ…はい!!」
鬼道に呼ばれ、路唯は顔を上げて立ち上がる。いつの間に、目的地にまで着いていたのだろう。
少女は掌に爪を立て、震えをどうにか抑え、不安を圧し殺した。
(………っ、)
絶望的な現状に、一気に虚しさと悲しみの波が押し寄せてくる。
思わず目を瞑ってしまいそうになるその光景は、先程までの優勝の喜びなど、吹き飛ばしてしまった。
――分かって、いたのに。
こうなることも、知っていたのに。
彼らが悔しそうに顔を歪めることだって。
彼らが、傷付いてしまうことだって。
全部…全部、…見えていた、はずなのに。
(……私は…何もできないんだ…ッ)
それが、未来を知る者の運命なのだと。
そう言われれば、そこで終わり。
けれどその運命は、まだ経験の浅い14歳の少女には、あまりにも重く。
あまりにも、残酷だった。