Short&Middle

□Rhapsody in dress〜序章〜
2ページ/2ページ

 閉まる扉を見ながら、机に頬杖を突いたウィルヘルムが、油を注いだ小火に風を送るような台詞を吐いた。
「だーって、バレる方に賭ける奴なんか、この警察署内全部探したっていないぜ?」
「て・め・ぇ・は、死ぬか? コラ」
 エマヌエルの手がウィルヘルムの胸ぐらに伸びる。一見丸腰の彼が採る殺害方法は何も知らない人間が見たら不明だろうが、剣幕的には視線だけで即座に相手を殺せそうだ。
「それは遠慮しとくが……冷静に考えろよ。本当のナリで潜り込んでみ? あっちゅー間に商品の仲間入りだぜ?」
「ぐっ……」
 胸ぐらを掴み上げられたまま落ち着き払って答えたウィルヘルムの言い分に、エマヌエルは言葉を詰まらせる。
「男のままで変装が可能ならまだしも、残念ながらお前の面(つら)は整いすぎてる。関係者なら絶対覚えてるだろーしな」
 それがエマヌエルには納得出来ない。自分の顔などどこにでもいそうな顔形だと思っているのだが、そんなに特徴的だろうか。しかし、それを言ったところでウィルヘルムを黙らせる事が難しいのは経験則で知っている。
 他に有効な言い回しがないかと探す内に必然的に黙り込む形になったエマヌエルにウィルヘルムが更に畳み掛けた。
「それに古今東西、男よりは女の方が油断を誘える。その女の容姿が整っていればいる程な」
「ッ……それで、俺はそういうどんな男も垂らし込める美女に変身できる訳かよ」
「喜んでメーキャップしてくれそうな女性なら何人か知ってるぜ。それこそ業界トップ女優も真っ青な美女に仕立て上げてくれそうな、な」
 眼鏡の奥の理知的な焦げ茶色が、ニヤリと笑う。
 既に負けが込んで来た論争に、エマヌエルはうんざりして来た。そも、この男に口で勝とうという方が無理なのだ。
 どう頑張っても自分が女装するしかなさそうな流れに、エマヌエルはあろう事か自分で止めを刺した。

「ふん、……どーせ俺は女顔だよっ」

 その自覚はあるんだな、と返って来る声を背に、エマヌエルは足音も荒く出入り口へ向かうと、ドアを破壊せんばかりの勢いで閉めた。



(…to be contined)


ブログお題置場にあった『どうせ女顔だよ』より。
一目お題を見た瞬間、『ウチのエマの事を書くしかないでしょー!』という感じで飛びついてしまいました。
お題の内容を良い事にエマの容姿の描写に思いっきり力入れてしまいました。
まだまだ力量不足は認めますが……個人的に書いててすんごく楽しかったvV(クフフ腐←しっかり)

こういう話も本編が進んだらエピソード2以降でやりたいです。
何となくドタバタコメディタッチになりそうですが、ドレスに女装で血塗れWin!(まあ主人公ですから最終的には……)
タイトルは悩みに悩んでやっぱりコメディタッチな予感。
ラプソディ・イン・ブルーを捩ったのは確かですが、曲とは一切関係ありません。


それでは読了有難うございました。

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ